新型コロナウイルスの影響から、多くの企業がリモートワークを導入しました。2021年11月以降、非常事態宣言も解除され、新規感染者数も落ち着きを見せてきていますが、大手企業をはじめリモートワークを働き方の1つとして定着しようとする動きが加速しています。
中でもIT業界は率先してリモートワークを導入し、導入率でも高い数字が出ています。こうした時世も相まって、ITエンジニアの働き方は多様化してきています。
そんな中、新しい働き方として「ワーケーション」というものが注目されています。仕事と休暇の両立、という、ひと昔前までは考えられなかった働き方が、現実味を帯び始めています。
本記事では、ワーケーションとはどのような働き方なのか、テレワーク同様にニューノーマルな働き方として定着するのか?
そしてワーケーションのメリット・デメリットや、導入に際しての課題などを詳しく解説します。
Contents
ワーケーションとは
ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」という2つの言葉を合わせた造語です。一般的には、観光地やリゾート地で休暇を過ごしながら働く、という、新しい働き方を指しています。
ワーケーションの成り立ち
ワーケーションとは、どのようにして生まれた働き方なのでしょうか。ワーケーションは、2000年代のアメリカで誕生したとされています。日本では、2017年にJALが働き方改革の一環として導入を発表したことから注目を集め、広まり始めています。
2020年、新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及したことに伴い、新しい働き方が注目され、ワーケーションの認知度も急速に高まっています。
まだまだ導入している企業は多くはないようですが、今後さらなる普及が予想されます。
日本におけるワーケーションの種類
「ワーケーション」と一口に言っても、色々な種類があります。ワーケーションは、「フリーランス型」と「雇用型」に大きく分けられます。フリーランスは働き方への制約が少ない分、より自由に休暇や働く場所を選択可能なため、ワーケーションとの相性がいいとされています。「雇用型」は、企業に勤める社員の働き方としてのワーケーションです。
「雇用型」のワーケーションは、さらに3種類に分けられます。1つ目が「休暇活用型」と呼ばれるものです。これは、有給休暇などの休暇の中で部分的に仕事をする、出張先でそのまま休暇をとる、といった働き方です。
2つ目が「日常埋め込み型」と呼ばれるものです。リゾート地にサテライトオフィスを設置してそこで働く場合や、場所を規定せずにリモートワークで勤務する場合がこれに当たります。
3つ目が「オフサイト会議・研修型」と呼ばれるものです。リゾート地で行われる研修や会議がこれに当たります。
ワーケーションのメリット
ワーケーションは、リゾート地や観光地で仕事をする、という魅力的な働き方です。それでは、従業員にとって、ワーケーションにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
長期休暇が取得しやすくなる
欧米では、1ヶ月を超える長期休暇も一般的に普及していますが、日本では有給休暇さえ取得しにくい企業もたくさんあります。ワーケーションの導入により、長期休暇を取得しやすくなるのは大きなメリットと言えます。
リモートワークの普及に伴い、場所を選ばずに働くことも可能となっているため、ワーケーションの導入によって生産性が落ちないように働くことも期待できます。
リフレッシュができてモチベーション維持につながる
毎日満員電車に乗って同じオフィスに働く、というのはストレスが溜まるものです。テレワークが普及しても、自宅に籠りきりになっている方も多いのではないでしょうか。
ワーケーションの導入は、そうしたストレスからの解放につながります。リゾート地でのリフレッシュを有効に使うことができれば、仕事へのモチベーションの維持にもつながります。
また、非日常的な空間での仕事は、クリエイティブな仕事にはいい影響を与えることもあります。普段のオフィスでは得ることのできなかったアイデアを得ることにつながるかもしれません。
ワーケーションのデメリット
良いことばかりに見えるワーケーションですが、デメリットはないのでしょうか?ここでは、従業員にとってワーケーションにどんなデメリットがあるのか、ご紹介します。
仕事と生活のメリハリ
ワーケーションは、「仕事」と「休暇」を合わせた言葉です。そのため、仕事と休暇の線引きが曖昧になってしまい、その2つをきっちり分けたい人にとっては、逆にメリハリがないように感じられるかもしれません。
「ワーケーションとして観光地に来たのに結局休めなかった」
「仕事もするはずが、観光の方に気を取られてあまり集中できなかった」
といった結果に終わってしまう可能性もあります。
仕事環境は通信環境の悪化
ワーケーションによって、仕事環境や通信環境が悪化し、結果として生産性が落ちてしまう可能性があります。サテライトオフィスのように、設備の整った場所で働くのなら良いですが、仕事をするのに十分な机や椅子がなかったり、通信環境が極端に悪く仕事にならなかったり、といったことが懸念されます。
企業側のメリット
ワーケーションには、従業員にとってメリットもデメリットもあります。それでは、企業側にとってはどうなのでしょうか?ここではまず、企業側にとってのワーケーションのメリットをご紹介します。
アピールポイントになる
ワーケーションのような働き方を導入している、ということは外部や求職者にとってのアピールポイントになります。有給取得率が高く、自由な働き方を認めている、新しい考え方ができる会社だ、ということを外部に示すことができます。
従業員の満足度アップ
先ほど触れたように、従業員にとってワーケーションには大きなメリットがあります。そのため、企業にとっては従業員の満足度アップにつながります。従業員の満足度が、離職率や生産性にも影響を与えることを考慮すれば、ワーケーションの導入は企業にとっても有益になります。
企業側のデメリット
それでは、企業側にはデメリットはないのでしょうか?認知度に反して、まだ導入している企業が少ないことからも分かるように、ワーケーションには企業側にとってのデメリットもあります。
導入や運用にコストがかかる
当然のことではありますが、ワーケーションを導入するには一定のコストがかかります。VPN等のネットワーク周りの整備や、PC等のハードウェアも用意する必要があり、サテライトオフィスを借りる場合にはさらに費用が掛かります。コストとリターンを考えて運用しなければなりません。
労働時間や成果の管理が難しくなる
ワーケーションは自由な働き方である一方、従業員がどのくらい働いていて、どの程度の成果をあげているのか、管理するのが難しくなります。勤退管理システムの導入等により改善はできるでしょうが、それにもコストがかかることには注意する必要があるでしょう。
ワーケーションを導入する際の課題
ワーケーションの導入を考えている企業は、どのような点に気を付けなければならないのでしょうか。ここでは、導入時の課題についてご紹介します。
セキュリティ
テレワークにも同様のことが言えますが、オフィスを出て働く際には、セキュリティ対策をきちんと施す必要があります。情報漏洩等、重大なセキュリティインシデントが発生する可能性が高まります。デバイスのセキュリティだけでなく、VPN等ネットワークのセキュリティの見直し、社員へのセキュリティ教育の徹底などを十分に行ったうえで、はじめてワーケーションの導入が可能となるでしょう。
新しいルールの制定
ワーケーションはこれまでになかった新しい働き方です。そのため、既存の社内規則だけでは、対応できない場合があるかもしれません。
例えば、休暇先で事故等にあった場合にはどのような対応が必要なのか、労災がおりるのか、といった規則や、宿泊費や交通費、残業代といった諸経費の扱いなどがそれにあたります。
いざワーケーションを導入してから困らないよう、導入の前の段階できちんと規則を制定し、従業員に周知しておく必要があります。
ITエンジニアとワーケーション
ここまで、ワーケーションの概要と、メリット・デメリットについてご紹介してきました。それでは、ワーケーションはITエンジニアには向いているのでしょうか?結論から言えば、ITエンジニアには向いている、というのが一般的な見解のようです。
テレワークの普及率に関しても、やはりIT企業が群を抜いていることからも分かる通り、ITエンジニアの仕事は、場所を選ばない働き方が可能な仕事です。
PCと十分な速度が確保できるインターネット環境さえあれば、仕事ができてしまう場合が多いからです。
セキュリティやデバイスの管理、勤退管理システムなどの導入に関しても対応が比較的容易です。IT企業だからこそ、ノウハウを既に獲得している場合が多いため、仕組みを整えるのにかかるコストを抑えることができます。
新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入したIT企業の中には、情勢が落ち着いてからもテレワークを基本的な働き方にする企業も多いでしょう。そうした企業の中には、今後ワーケーションを導入する企業も増えるのではないでしょうか。
特にリモートワーク疲れなど、ITエンジニアも精神的な疲れが見えてきており、会社に出社したいと思う人も増えています。実際にIT企業もテレワークから事務所勤務に切り替え、テレワークをやめたという企業も出ています。
しかし、ワーケーションというような働き方であれば、テレワーク疲れというような自宅に籠もって仕事をする環境とは違い、癒やされながら仕事ができるというような環境の変化を楽しむことができます。
また、IT企業はフルリモートという働き方を推進しているケースも増えてきており、事務所に出社せずに仕事を完全なリモートワークとして行うのです。
そうすることで、事務所は最小にして固定費を減らし、従業員へ還元しようとする動きもでています。
フルリモートという働き方が定着すれば、住居は事務所の近くに構える必要がありませんから、例えば沖縄に住んでいて、本社事務所は東京にあるというようなことも実現している方もいるのです。
ワーケーション、テレワーク、フルリモートワークそれぞれの働き方には違いがありますが、それぞれが関連性があり、いずれも働く場所を選ばないという思想から発展している働き方の多様化なのです。
まとめ
ワーケーションの概要と、メリット・デメリットについてご紹介してきました。
仕事と休暇の両立であるワーケーションには、社員にとってはモチベーションの維持、企業にとってはアピールポイントになるなど、大きなメリットがあります。
一方で、まだまだ導入している企業が少ないことからも分かるとおり、コストなどのデメリットや課題も多く存在します。
しかし、自由な働き方をしやすいITエンジニアに向いている働き方でもあります。今後ワーケーションは、ITエンジニアにとって一般的な働き方になっていくかもしれません。
ITエンジニアの働きやすい環境はいずれニューノーマルとして定着していくものと思われます。
また、働き方の多様化していく背景には、コロナ禍や働き方改革法の施行などの理由だけではなく、ITエンジニアの深刻な人手不足が現実化している中、多くの企業が有望なITエンジニアの争奪戦を繰り広げてしまっているという状況もあります。
そのため、働き方の多様化や、福利厚生などで他社と差別化を図り優秀な人材を確保したいという動きになっているのです。
しかし、中小企業には優秀なITエンジニアを確保することは非常に難しく、若手や未経験者を育ててITエンジニアとして成長していく支援をする中小企業が増えているのです。
そのような状況ですから、未経験者にもチャンスはあります。ITエンジニア専門の転職サイトでは未経験者OKの求人が多く探すことができますから、ITエンジニアの中でもフロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニアなど、細かな職種別に貴方の積みたいキャリアの求人を探してみてはいかがでしょうか。