ITエンジニアの中で求人の年収が比較的高い職種といえば「プロジェクトマネージャ(略して「PM」)です。
2018年末の国税庁データでは給与所得者の平均年収が441万円ですが、プロジェクトマネージャの平均年収は2016年度にITスキル研究フォーラム(iSRF)が調査した結果では607万円となっており、IT系の中では「マーケティング」「コンサルタント」に次ぐ年収となっています。
しかし、今からIT業界を希望されるみなさんにはプロジェクトマネージャがどのような仕事なのか、いまひとつイメージがわかないのではないでしょうか。
ここでは、プロジェクトマネージャがどのような仕事なのかを説明します。
「プロジェクト」ってなに?
IT業界でよく耳にする「プロジェクト」。
日本語では「~計画」と訳されます。特に業界固有の言葉ではなく、建設業界や製造業界でも使うため、あちこちで見かけたり聞いたりしたことがあると思います。
「プロジェクトマネジメント協会(PMI)」が発行している「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK)」によると、プロジェクトとは
独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務
と定義されています。
IT業界で言うと
お客様のために独自のサービスを創造するために実施する有期性のある業務
と解釈して問題ないでしょう。
ここでポイントなのは「有期性」です。必ず「開始」と「終了」が定められているのがプロジェクトです。一定の期間でお客様の要望を確認し、それを満たすサービス(システム)を導入する、ということです。
プロジェクトマネージャはこの「プロジェクト」の責任者になります。
業務内容
プロジェクト全体を見渡しながら上手く遂行していくことが主な業務になります。
受託開発プロジェクトでの開発工程は主に
(1)要件定義
(2)設計
(3)開発(製造)
(4)テスト
(5)納品
となっていますが、プロジェクトマネージャは「(1)要件定義」より前の段階、お客様からの開発案件依頼があった際に大まかな人数、期間、費用などを先に算出した上でプロジェクトチームを結成します。
すべての工程において、進捗状況の確認、問題が発生した場合のお客様との交渉、開発メンバーのモチベーション管理など、プロジェクトの遂行に必要な調整を行います。
規模によってはシステムをいくつかに分けて、それぞれにプロジェクトリーダーを配置します。その場合、プロジェクトリーダーが自分の担当部分の管理を行い、プロジェクトマネージャはプロジェクトリーダーと情報を共有し、調整します。
折衝
プロジェクトマネージャはそのプロジェクトの責任者ですので、お客様やプロジェクトメンバーとの折衝をする立場になります。
例えば開発工程でトラブルが発生して予定のスケジュールでは間に合いそうにない、といった場合に、開発側の状況を把握し、お客様の事情も確認した上で、スケジュールの延長が可能か、人員を増やして納期を間に合わせるか、など最適な方法を考え、依頼することが重要な業務になります。
管理
プロジェクトの進捗管理もとても重要な業務です。
プロジェクトメンバーの業務進行に問題が発生した場合は解決策を考え実施する必要がありますし、色々な理由でモチベーションが下がってしまったメンバーにやる気を出させることも大切です。
必要な知識、スキル
「プロジェクトマネージャ」に必要な知識や業務上必要なスキルをチャートにまとめました。
「折衝」「管理」が高くなっているのは、業務内容で説明した通りです。
「技術」が低くなっていますが、決して不要ということではありません。ただ、プログラミングをする機会はほとんどありませんし、キャリアが「システムエンジニア」からスタートした場合は、開発経験があまり無いケースもあります。その場合は「知識」である程度はカバーが可能です。
キャリアパス
プロジェクトマネージャになるまでと、その先のキャリアパスについて説明します。
到達まで
「プログラマー」から開始するパターンと「システムエンジニア」から開始するパターンがあります。「プログラマー」の場合は、製造工程から少しずつ担当範囲を広げていき、上流工程を手掛けるようになったら「システムエンジニア」のポジションになります。
「システムエンジニア」からも同様で、上流工程の業務だけではなく、プログラマーの進捗管理や問題が発生したときの対応など、少しずつ担当範囲を広げていきます。
そこからシステムの一部を管理する「プロジェクトリーダー」を経験し、最終的にプロジェクト全体をまとめるプロジェクトマネージャになります。
その先の展望
プロジェクトマネージャがキャリアの到達点という考え方もありますが、更にステップアップする場合は「ITコンサルタント」という道があります。
「ITコンサルタント」が担当するのはプロジェクトマネージャよりも更に上流の工程で、お客様の抱える課題を発見して提案を行うポジションになります。お客様とのコミュニケーション力や正しく提案するためのIT知識が要求されます。
平均年収は前述のITスキル研究フォーラム(iSRF)の調査では673万円と、プロジェクトマネージャよりも高い年収が期待できます。
他職種との連携
アプリケーション開発を行う技術者と基盤(インフラ・ネットワーク、データベース、セキュリティ)にまつわる業務を行う技術者、つまりシステム開発を行う職種と連携し、ひとつのシステムを作り上げることになります。
そういう意味では他職種と連携しないと業務が成立しない職種でもあります。
関連資格
プロジェクトマネージャに役に立つ資格を紹介します。
国家資格は、上級であれば国や公共団体の仕事の一部を受注しやすくなるというメリットがあります。
ベンダー資格は、最新のものを持っていると技術力の裏付けになってくれます。
[国家資格]
・プロジェクトマネージャ試験(PM)
情報処理技術者試験の中でも高度情報技術者に分類される資格です。
合格は難しいですが、合格するといわゆる「高度IT人材」という位置づけになり、プロジェクトマネジメントに関する知識を持っていると認識されます。
[ベンダー資格]
・PMP(Project Management Professional)
「プロジェクトマネジメント協会(PMI)」が認定している国際資格です。
試験は英語で行われ(日本語の補助記述ありの選択式)、合格後も維持のために一定数の講習を受ける必要があるのでかなりの難関資格ではありますが、最新のプロジェクトマネジメントに対する知識があるという意味では一番強い資格になります。 国際資格なので、海外でも通用します。
おわりに
「プロジェクトマネージャ」は、プロジェクトの責任者として、かなりのスキルを要求されます。IT業界の未経験者がいきなりなることはほぼ無理だと思って良いでしょう。
しかし、「プログラマー」から少しずつ業務範囲を広げていけば、実際にプロジェクトを管理する立場になったときに覚えなければならないことはそこまで多くないはずです。
昨今はシステムが複雑化しており、プロジェクトをまとめることができるITエンジニアの需要は当分なくなることはないでしょう。
プロジェクトの一員として業務を行っていくうちに、優秀なプロジェクトマネージャに出会うことがあると思います。
身近な人の働き方を見て、良いと思ったところを取り入れることでプロジェクトマネージャへの道は開けるのです。