IT企業に事務所は必要なのか? 事務所廃止への壁と課題からの考察

IT業界では他の業種と比較してテレワークで乗り切れる業務が多い背景から、事務所の廃止や縮小が進みつつある状況です。

次のグラフからも、他業種と比較してIT業界はテレワークが進んでいることがわかります。しかし、IT企業と一括りにしても業務内容は様々です。機器設定を行う・環境整備をする等、業種によっては全ての業務をテレワークで行うのは難しい場合もあるでしょう。

今回は、IT企業が事務所を完全に廃止する場合に発生する問題・課題を見ながら事務所の必要・不要について考察します。

『事務所を廃止する場合にどのような準備が必要か』
『事務所を廃止することのメリット・デメリットは何か』
『テレワークをする場合、クリアしておくべき課題は何か』

完全テレワークで企業を運営する上ではいかにIT業界といえども厳しい障壁・課題もありますから、後程詳しく解説してまいります。

非常事態宣言解除後のIT企業に立ちはだかる“障壁”とは?

非常事態宣言を受け、急遽テレワークに切り替えたという企業も多数ありました。その際の経験として、『うちにはテレワークは向いていない』と早々に諦めてしまったケースも少なくないことでしょう。

・社員の評価が正当に行えなくなった
・働く意欲が削がれてしまう懸念が拭えない
・生産性の低下があった・懸念としてある

このように、企業にとっても従業員にとってもマイナスとなる要因を抱えたままではテレワーク導入は失敗してしまいます。そのままでは新型コロナウイルスの感染拡大時はもちろん、別の新たな危機が訪れた時にも乗り越える事は難しくなるかも知れません。

そもそも大半の企業が評価の基準や制度を変えずに急遽テレワークに踏み切ったのですから、マイナス要因が発覚するのは当たり前なのです。本来であれば見つかった課題について対応・検討を進めて再整備をするところですが、それにも時間と費用がかかるため 、外出自粛が解除され従来型の勤務に戻せるとなったら再検討・再整備を行わずにテレワーク不採用を決めた企業も少なくありません。

その他にも、日本経済新聞社が2020年3月に行った調査では以下のような課題があったと回答する企業も多いことがわかりました。

・チャットツールなどの熟練度がまちまちでスムーズに業務が行えない
・紙ベースの作業も多く、出社せざるを得ないシーンが度々あった(押印など)
・自宅にインターネット環境がなく、テレワークできない社員もいる
・自宅では業務に集中できず、生産性が落ちる社員がいる

テレワーク導入にあたり、検討しておくべき事案として参考になるものも多いのではないでしょうか。

今までの話からテレワークにはマイナス面ばかりが目立ちそうですが、課題ばかりではなくテレワーク導入で成功した企業もあり、従業員にとっても良い結果を生み出した例もあるのです。

自社にとって働きやすく、従業員同士のコミュニケーションをとりやすい仕事の進め方について模索し、それにあったツールを導入することでテレワークの成果は大きく変わります。テレワーク導入の際の他企業の取り組みなどを参考にして、対応を模索してみるのも良いのではないでしょうか。

IT企業にとっての事務所は必須?不要?

大手IT企業の実例として、ヤフーが行う改革を簡単にご紹介します。

ヤフーでは正社員・契約社員・嘱託社員が対象にリモートワークの上限(月5回)を撤廃し、従業員個人の創造性が発揮できる場所であればどこで仕事をしても構わない、という方針を打ち出しました。
従業員の反応はいかに?というところを見ていくと、多くの社員が『生産性もあがり働きやすくなった』と感じているということで成功した事例です。

このように事務所を廃止したとしても成功する事例もありますが、先立ってテレワークの進んだアメリカではオフィス勤務への回帰も強まっているという事実もあり、完全テレワークに切り替えて事務所を不要と断言するのは簡単ではないことも伺えます。

ここではIT企業にとって事務所は必要なのか、それとも事務所は不要なのか、双方について考察しまとめますのでご参照ください。

IT企業に事務所が”必要”な理由を考察

事務所が必須という場合に以下のケースが該当します。

(1)許認可問題

IT企業では人材派遣業の許可を取得している場合が特に多く該当するかと思いますが、許認可を取得している場合には事務所を閉じてしまうと法令違反となる可能性が出てしまいます。
まずは申請書類の控えを確認してみましょう。その資料に事務所の賃貸契約書、登記簿謄本、外観や内装写真を添付している場合には許可条件として事務所を構えるということに重点がおかれているケースがあります。知らずに解約してしまうと以降の事業展開にも関わりますので、必ず自社が持っている認可や適用条件などをしっかり確認するようにしましょう。

また、認可条件に事務所の開設があるということは、「現実に事務所を構えていることは信頼の1つ」であるという考えに繋がります。
新しく取引する法人が事務所を構えていなかった場合に、それが珍しくない社会になるまでに時間がかかる可能性は十二分に考えられます。一度知名度を得た大企業であれば問題解決もしやすいと思われますが、それ以外の企業にとってはリスクになる要素であることは間違いないでしょう。

(2)郵便物・宅配物の受け取り問題

郵便物や宅配物の受け取り場所として事務所が必要、というケースも多いでしょう。この場合には必ずしも事務所空間が必要ということではなく、中にはバーチャルオフィスを契約することで問題なく事業継続されるケースもあるので検討の余地はあります。

ただし、バーチャルオフィスの場合は転送頻度の関係で受け取りが遅れてしまう等の問題につながります。サービスや自社の業務でやり取りしている郵便物の都合を見て検討すると良いでしょう。

(3)従業員の働き方・働く場所問題

事務所を解約する場合、従業員はテレワークを余儀なくされることになります。これはすべての従業員にとってメリット、とは限りません。
中には出勤するほうが集中できたり、インターネット回線等の環境整備や作業スペースの確保などの自宅で仕事をするのが難しい事情をかかえていたり、というケースがあるのです。そういった従業員が比率的多い場合などは、事務所はあったほうが良いということになります。

また、テレワークによって人との交流が限定的になったり、仕事とプライベートの区切りが薄くなったりすることで精神的に支障をきたすケースも報告されています。単純に外出が減りやすいことに起因する場合もありますが、在宅が基本となるライフスタイルが合う・合わないということはあり得ます。

IT企業に“事務所は不要”な理由を考察

メリットとしてあげられるものの一つに、事務所を廃止することで現状支出となっている事務所の賃料が不要になることが挙げられます。賃料以外にも電気代等の事務所維持費、文具や消耗品にゴミ処理費用など、事務所の維持費も削減されることになります。
IT業界は情勢悪化がほかの業種に遅れてくる、とも言われています。業績が新型コロナウイルスの感染拡大前の状況から変わらざるを得ない業界でもあり、状況が仮に悪化してもコストカットは企業が存続するのに有効な手段です。

事務所の廃止は再度外出自粛の事態に陥った場合に有効でもあり、ウィズコロナとも言われる今後の生活様式ともマッチするという意見もあります。確かに、通勤不要となることで従業員の通勤時間だけでなく、不特定多数との接触を減らして新型コロナウイルスをはじめとする感染症への不安と戦わざるを得ない心理的・肉体的な負担も減らすことができます。

IT企業が事務所を完全廃止する場合の障壁と課題

事務所を完全廃止するには、社内業務を完全にテレワークに切り替える必要があります。テレワークへの切り替えがうまくいかない企業の悩みには、大きく3つの柱があると考えられます。

(1)技術的課題
・社内環境の整備ができる人員がいない
・テレワークする為の準備ができない
・セキュリティ対策への不安
・許認可や各種申請時の住所をどうするか
・郵便物の受け取りなどの問題

(2)コスト的課題
・環境整備や新たなシステム導入にかかるコスト
・バーチャルオフィスやレンタル会議スペースなどの利用時のコストが適宜発生する

(3)人的課題
・上層部がテレワークに懐疑的である
・自宅で仕事できる環境が整っていない社員がいる
・完全オンラインの企業への信頼獲得の不安
・自宅では生産性が落ちる社員がいる

ここであげた他にも、まだ企業ごとに異なる課題があるかもしれません。解決可能な課題も多いですから、自分達にとって最善の解決策を模索しながら検討してみると良いのではないでしょうか。

事務所廃止でなく、まずは縮小も一案|富士通の実例

事務所そのものが必要か不要か、色々な視点から考察してきました。しかし、この問題の解決は必要・不要の極論だけではありません。もう一つの選択肢として、事務所の縮小という方法もあります。

実際に事務所の縮小に踏み切っているIT企業の話も多く聞いていますが、ただ単純に縮小するのでは三密の状況を作り上げてしまいます。では、どのような方法でオフィスを縮小している企業があるのかみてみましょう。

・事務や経理などの出社した方がスムーズな部署のみ出勤し、その他の部署はテレワークにした
・会議スペースのあるレンタルオフィスを借りて必要に応じで出社できるようにし、基本はテレワークとした
・(曜日や時間帯など)分散して出勤するようにして同時に事務所にいる人間の数を減らすことで事務所の縮小を可能にした

IT企業は業務内容にもよりますが、事務所は必須というわけではありません。
とはいえ、縮小するだけだから、と簡単に踏み切ってしまうのも考えものです。テレワークで成功する為には人の意識と企業の制度の両方を変える必要があることを意識しておきましょう。

オフィス縮小検討時に参考にしやすい改革の事例として、富士通の改革をご紹介します。富士通は約8万人いる国内グループ従業員を2020年7月からテレワーク勤務を基本とすることとしましました。
その際、次のような施策を打ち出しました。

・在宅勤務の環境整備費用として、全員に月額5000円支給する
・通勤定期券代の支給を廃止
・出社にともなう交通費は実費精算
・2020年度中に、社給スマートフォンの貸与範囲を国内グループ全従業員に拡大

このような改革を行い、どう感じたか社員へアンケートをとったのですが、『働きやすくなり生産性もあがったと感じる』という回答が多く寄せられています。
力技でテレワークに切り替える、一方的にコスト削減する、ということではなく、働きやすい制度を整えたうえでテレワークに切り替えたからこその成功と言えるでしょう。
オフィス縮小を検討する際に欠かせない、改革の参考としたい事例です。

IT企業に事務所は必須ではないが、対策は万全にしておくべき

IT企業は事務所がなくても業務を行える場合が多くあります。
事務所を構える、廃止する、どちらにもメリットとデメリットがあります。第3の選択肢として、縮小するという方法もあることもお伝えしました。今まで当たり前にあったものを無くす、それには抵抗感もあることでしょう。しかし、今の自分達にとって最適な方法で事業を継続することこそが大切なのではないでしょうか。

テレワークで事業をスムーズに行うには、成功事例である企業の事例を参考にすることも有効です。少なくとも、テレワーク環境で事業を継続できる地盤を作り上げることができれば、再度の外出自粛が求められるようなことがあっても安心して働くことができるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの影響は終息が見えない状況が続きますので、早いうちに環境と制度を整備して万一に備えておきたいですね。

<参考>
国土交通省
日経新聞社BizGate

ITエンジニアの求人探しはエンジニア専門転職サイト「Javaキャリ」

転職活動はいつだって期待と不安の入り混じったものです。少しでもいいから期待の方を大きくしたい、良い求人に出会いたいと願うのは当然のことでしょう。
Javaにこだわるエンジニアのための転職サイト「Javaキャリ」ではIT業界の中でもJavaエンジニアに特化した転職サイトとして多数の求人をご用意。少しでも良い求人と出会えるよう、専門サイトならではの機能で貴方の転職活動を応援します。

エージェントサービスに登録すれば年収査定、適性診断からキャリアプランの設計まで、業界経験豊富なコンサルタントへのご相談も可能です。
「Javaキャリ」を是非あなたの転職活動にお役立てください!


「Javaキャリ」に登録してエンジニアの求人を探す!

  • ファイナンシャルテクノロジーシステム株式会社
    年収 350万円 ~ 700万円
    業界30年のノウハウと革新的な独自AIプラットフ…

    〈会社の特徴〉 弊社はFintech分野をリードする、先進的なシステム開発を得意とする会社です。 Finance(金

    ファイナンシャルテクノロジーシステム株式会社
    place東京都
  • 株式会社インプレス
    年収 300万円 ~ 600万円
    【20代・30代活躍中】オープン系SE・PG◆上…

    経営理念は、「技術の前に人ありき」。 人柄重視といっても、難しいことは求めません。 きちんと挨拶ができ、お客様や

    株式会社インプレス
    place東京都
  • 株式会社オープンアップシステム
    年収 350万円 ~ 800万円
    【Webエンジニア】開発現場で活躍し続けたいエ…

    2022年4月にグループ企業3社が互いの強みを持ちより統合し『株式会社オープンアップシステム』として新会社を設立。より大

    株式会社オープンアップシステム
    place東京都
  • 株式会社クリエーション・ビュー
    年収 400万円 ~ 800万円
    一次請け案件8割/20代活躍中/残業ほぼゼロ/1…

    「手を動かすだけでは物足りない…」 そんなスキルアップを目指す、エンジニアの想いに応えます! エンジニア一人ひ

    株式会社クリエーション・ビュー
    place東京都
  • AZURE・PLUS株式会社
    年収 300万円 ~ 500万円
    上流工程で活躍する!設計・製造フェーズからのスキ…

    【当社は今、アプリケーション開発エンジニアを求めています!】 『PGから、設計・要件定義を担当するSEを目指したい

    AZURE・PLUS株式会社
    place東京都
  • 株式会社アクトプロ
    年収 480万円 ~ 900万円
    【急募!残業時間10h以下/大手交通インフラ優良…

    弊社アクトプロは長期に渡りお客様との信頼関係を構築してきました、また働く環境にしっかり配慮しております。 各プロジェ

    株式会社アクトプロ
    place東京都

SNSでもご購読できます。