IT人材は2030年に最大79万人不足するといわれています。人材不足の報道を受け、未経験からITエンジニアを目指す人が急増するとともに、ITスクールやオンライン学習サイトも乱立しています。
新型コロナウィルスの猛威による影響によって、飲食店や観光業など大きな影響があった業界も多く、安定している業界としてIT業界に手に職を付けて安定して働きたいと思っている人も多いのだと思います。
スクールや学習サイトの広告で、「1年でフリーランスへ転向できる」「いくつになってもプログラミングの習得は遅くない」などのキャッチフレーズを見かけた人も多いのではないでしょうか。
このようなフレーズを見たときに気になるのが、未経験者がITエンジニアに転職できる年齢制限です。
人材不足といっても、40代・50代でもプログラミング技術を習得すれば、未経験からの転職は可能なのでしょうか?
今回は、「何歳まででも未経験からITエンジニアをめざせるのか?」というテーマを中心として、年齢が上がっても転職を成功させるポイントなどについて詳しく解説します。
Contents
未経験だと何歳までITエンジニアに転職できる?
未経験からITエンジニアに転職するときに年齢制限はあるのでしょうか? 年齢制限を思わせる考え方として知られる「プログラマー35歳限界説」、40代でも転職できる可能性などについて解説していきます。
プログラマー35歳限界説
IT業界では、プログラマー35歳限界説という考え方が知られています。1980年代ごろに流行った言葉です。
当時の日本は年功序列制が当たり前であり、年齢が増えるにつれて管理職にシフトしていく文化がありました。そのため、管理職になることを促すために使われた言葉だと解釈する方もいます。
そのほかの見解として、プログラミングは技術の進歩が激しい一方で、エンジニアは30歳を過ぎるころから吸収力や体力が衰えることから、35歳限界説が生まれたという考え方もあります。
いずれにせよプログラマー35歳限界説という言葉があっても、年齢に関係なくプログラミングをしている方もいます。35歳を超えたらプログラミングをやめたほうがよいというわけではありません。プログラマー35歳限界説は年齢制限を示す言葉ではないので、勘違いしないようにしましょう。
IT業界未経験の40代・50代だと転職は厳しい
ハローワークの求人では、年齢不問かつ未経験者でも応募できるプログラマーの求人が見つかります。したがって、40代・50代のIT未経験者でもプログラマーを目指すことは不可能ではありません。
しかし、40代・50代の未経験者だと、雇用条件が合わ無いなどの理由から、転職の難易度が急上昇します。
年功序列にもとづく企業で働いていた方であれば、前職と比べて給料が極端に下がってしまう可能性が大きく、企業からすると、若い社員を安い給料で雇用したほうが合理的だといえます。
ただ、40代・50代であれば管理職を経験している方も多くなるので、マネジメントスキルをアピールできます。
プログラミングだけが得意な人材よりも、チームのメンバーを管理できる人材を求めている企業であれば、前向きに検討してもらえる可能性もゼロではないでしょう。
すなわち、年齢が上がるにつれ、プログラミングスキルだけではない経験や実績を見られることになるといえます。
参考:求人票 プログラマー・SE【未経験の方もご相談ください】(ハローワーク)
以前より限界年齢が上昇している
プログラマー35歳限界説をご紹介しましたが、40代・50代でも応募できるプログラマーの求人は意外と簡単に見つかります。
おそらく以前よりもITエンジニアの限界年齢が上昇している可能性が高いと思われます。
要因として深刻なIT人材不足が考えられます。日本では将来のIT人材不足が問題となっており、経済産業省による「IT人材需給に関する調査」では、2030年にはIT人材不足が最大約79万人になるという試算を示しています。
当然、IT人材が不足すれば未経験者層まで範囲を広げ登用する企業が増えます。年齢の若い未経験者だけでは補えない場合、求人の年齢制限を引きあげざるを得ないといった流れになることが予想されます。
未経験者のIT業界への転職は30代から難しくなる理由
未経験者のIT業界への転職は40代・50代からでなく、30代からでも難しいといわれることがあります。想定できる理由を確認してみましょう。
スクールの年齢制限が29歳までが多い
入学には条件が設けられていて、年齢制限が29歳までのスクールが多いことが一つの理由です。
ただ、30歳を超えても利用できるスクールもあります。たとえばテックキャンプでは、30歳以上でもサービスを受講して転職に成功した方を輩出した実績があります。なお、就労支援は40歳未満であることを上限としています。
30代からの転職は難しいといわれていますが、支援してくれるスクールがあるので、諦めずに探してみるとよいでしょう。
スクールの授業料には注意が必要
プログラミングスクールが乱立しているというお話を前述でしましたが、通常のスクールであれば半年間通って授業料は数十万円ということが多いと思います。
しかし、中には授業料はかからないといったスクールも存在します。しかし、何故授業料がかからないのか不思議に思いませんか。そういったスクールは転職先、就職先を紹介し、入社することというのがセットになっていて、スクール運営会社は紹介先の企業から人材紹介料をもらうため、授業料がなくても運営していくことができるのです。
そういった形式のスクールに問題があるわけではありませんが、必ずプログラマーとして転職することが決まってしまいますので、プログラミングスキル習得後を決めていない人は注意が必要です。
また、最近では、入学時から受講中は費用がかからず、転職できたら給与の一部を授業料として支払うといった形態のスクールもあります。
アメリカで流行しているISA(所得分配契約モデル)というのですが、結果として授業料を払うことには代わりありませんので、各種スクールの形態をよく理解してから契約してください。
未経験からITエンジニアを目指す方法
年齢が高い未経験者の転職は難しい傾向ですが、応募できる求人がある限り不可能ではありません。未経験からITエンジニアを目指す方法を解説していきます。
方法1.ポートフォリオで差別化する
ITエンジニアとしての経験がなくても、プログラミングを学習すればアプリやツールを作成できます。
求人に応募するとき、ポートフォリオとなる作品を提出すれば、ほかの求職者と差別化してもらえます。採用する側としても、ITエンジニアとしての適性を判断しやすくなるので、未経験者を雇用するリスクを和らげられるでしょう。
実際に未経験者の方にポートフォリオの持参を求める求人もあるので、時間に余裕がある方はアプリやツールを作成してみてください。
参考:求人票 JavaScriptプログラマー(ハローワーク)
方法2.副業で実績を作る
近年、業務委託の副業マッチングサービスが登場しています。企業と雇用契約を結ばずに、単発でプログラミングの仕事を副業で受注できます。
プログラミングを学習したあとに、難易度の低い案件に応募して実績を作れば、その実績をもとにほかの案件にも応募できます。
副業で積み上げた実績を転職活動でアピールすれば、IT企業で働いた経験がなくても採用担当者から注目してもらえるでしょう。
方法3.転職エージェントに相談してみる
転職エージェントとは、求人の応募から内定が決まるまで転職をサポートしてくれるサービスです。
転職サイトとの大きな違いは、キャリアアドバイザーが経験やスキルヒアリングしてから最適な求人を紹介してくれることです。
IT業界に特化した転職エージェントを選べば、ITエンジニアの転職事情に詳しいキャリアアドバイザーが対応してくれます。
「IT業界では未経験者は何歳まで転職が可能なのか?」という質問に対しても的確に答えてくれるでしょう。
30歳以上の未経験でもITエンジニアに転職できる人の特徴
30代以上でもITエンジニアに転職する方もいます。どのような人であれば転職しやすいのか気になる方も多いでしょう。
企業の立場としては未経験者を雇用した場合、早く独り立ちをして収益を上げられる人材になってもらえないと、人件費と教育費がかさんでしまって赤字となってしまいます。
したがって、素早くIT知識を吸収できる学習力が重要になります。その点、ITに関する資格を取得している方であれば、応募の際に学習力をアピールできるでしょう。
ただし、IT知識をたくさんインプットしても、仕事にアウトプットできなければ利益につながりません。学んだ知識を活かして、業務を効率化したり新しいアイデアを生み出したりする応用力も大切です。
業務の改善案や新たなプロジェクト案を上司に提案できる積極性を持つ人材であれば、企業の立場としても採用したいと思うでしょう。
基本的に40代、50代であればプログラミングスキル以外に特質するべくスキルをもっていることが転職を成功させる重要な要素となります。裏を返せば、未経験からプログラミングスキルを習得し、異業種などで実績や経験を積んでこなかった人は、転職が非常に難しいと言えます。
まとめ
IT業界での転職では、厳密に年齢制限があるわけではなく、年齢不問の求人もありました。30代・40代でも未経験の転職は不可能ではないとおわかりいただけたでしょう。
深刻なIT人材不足から限界年齢が上がってきていることは間違いありません。しかし年齢制限を緩めても採用するのは難しく、育成を前提として未経験者層まで対象を広げる企業も多いです。したがって、未経験者にとっては広く門戸が開いているといえるでしょう。
しかし、年齢が高いとプログラミングスキルを習得しづらくなることから、限界年齢が低めに設定されてしまうのは確かです。
30代、40代で未経験からエンジニアになるためには、ポートフォリオの用意や実務経験を積むための副業などが鍵を握ります。
ただ、ポートフォリオの用意や副業の開始などが難しく感じる方もいるでしょう。その場合はIT業界の転職エージェントに相談してみるといいでしょう。
現在のスキルセットをふまえて、未経験からIT業界を目指す方法をアドバイスしてくれます。応募書類の添削や模擬面接なども対応してもらえる場合もあります。まずは気軽に相談してみてください。