近年、「リスキリング(職業能力の再開発、再教育)」という言葉を耳にする機会も増えています。
DXを推進するためには、適切なスキルを有する先端人材が必要となります。
そのため、近年では企業がリスキリングを導入し、自社でDX人材の育成を進める事例が増えています。
しかし、まだま実施している企業は少なく、圧倒的にDXを進めるための人材は不足していると言われています。
また、リスキリングについて正確に理解していないエンジニアも多いのではないかと思います。
そこで、この記事ではリスキリングの概要や導入方法、メリット・デメリットなどについて解説します。
■□■□プログラマーなどITエンジニアを目指しているならIT業界専門転職サイト「Javaキャリ」が最適!完全無料の会員登録はこちらから■□■□
Contents
リスキリングとは?
リスキリングとは、職業能力の再開発や再教育のことを言います。言い換えると、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶことです。経済産業省では、リスキリングを以下のように定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する・させること
リスキリングが必ずしもDX教育につながるわけではありませんが、近年ではDX化のための新しいスキル習得や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業に就くためのスキル習得を指すことが増えています。
注目を集めているきっかけは、2020年に開かれたダボス会議においてリスキリング革命が発表されたからです。さらに、岸田総理の所信表明の演説内では、リスキリングに「今後5年間で1兆円投入」という発言があり、この発言が新語・流行語大賞にもノミネートされています。
近年では企業のDX戦略において新たに必要な業務や職種に対応できるように、従業員がスキルや知識を再習得するという意味で使用されています。
リスキリングとリカレント教育の違いとは
リスキリングが、「企業が新しいスキルを従業員に身につけてもらう」ことが主軸に置かれています。一方で、リカレントは、「比較的自らの意思で別のスキルを身につける」ことに主軸が置かれています。違いは、仕事と並行しながら実施するかどうかです。
リカレント教育は、一旦仕事から離れて、大学や専門学校などの教育機関で学ぶことをさします。リスキリングの場合は、仕事から一旦離れることなく、業務と並行しながら必要なスキルを身につけていきます。従業員の自主性よりも、企業側の取り組みによって学習してもらうといった性質が強い手法です。
プログラマーのリスキリングが注目されている背景
DX人材(先端人材)の人材不足
リスキリングが注目されている背景の一つとして、DX推進が関連しています。日本企業のDX推進が進む一方で、DX人材が不足しているという課題を抱える企業が多くなっているのが現実です。ただでさえIT業界では人材不足が課題として抱えていますが、さらにDX人材の人材不足で追い討ちがかけられています。三菱総合研究所の推計によると、国内では事務職や生産職に数百万人規模の大幅な余剰が生じる一方で、DX人材をはじめとした専門・技術職は同程度以上の不足が予測されています。(※)
DX推進に必要なスキルを持った人材を育てるということも視野に入れなくてはならず、リスキリングにより社員を二刀流で育成していく必要があります。
※参考:三菱総合研究所『目指すべきポストコロナ社会への提言』
国がリスキリングを掲げる理由とは
冒頭であった通り、2022年に岸田総理大臣の所信表明演説により、個人のリスキリング支援で5年間で1兆円投入すると発言しています。リスキリングを推奨する理由は、日本における「構造的な賃上げ」を実現しようとしているからです。労働者に対してリスキリングを促し、今後成長する分野への労働移動を進め、それらに見合った職務給への移行を目指し、中長期での賃上げを目論んでいます。
労働者視点では、労働者がリスキリングに取り組む背景として、失業や収入源の不安があります。企業も、従業員が総活躍する組織にすることを目指すためにリスキリングを推進しようとしています。
リスキリングのメリット
業務効率化や業績向上が見込める
リスキリングの導入によって、従業員は新しい知識やスキルを身につけられます。それに伴って、業務でのパフォーマンスアップや業務品質、作業スピードの向上などが見込め、業務効率化や業績向上が期待できます。また、労働環境の改善にも役立ちます。従業員のスキルが向上し、業務時間を短縮できれば残業も削減可能なため、しっかりと休養できる体制が整えられます。
従業員のモチベーションアップ
リスキリングによって、新たなスキルを身につけた従業員はできる業務が増え、より活躍できるようになります。上司を含んだ周りの従業員から正当な評価を受けることによって更なるモチベーションアップになり、より意欲的に仕事へ取り組む可能性があります。また、新たな知識を習得することにより、これまでになかった新しいアイデアが思い浮かぶようになる可能性もあります。新しい知識を習得したことによって生まれる斬新なアイデアが、画期的なビジネスチャンスを引き寄せる可能性もあります。
企業文化の維持
DX推進のために新しい人材を大量に採用した場合、これまで培ってきた企業理念や企業文化の維持が困難になることがあります。すでにその企業で活躍している人材を育成することは、大量採用するよりも、企業文化の維持や優秀な人材の確保につながります。
採用コストの削減
DX人材は、専門性が高いために採用コストが大きくかかります。また、前職で高い専門性を発揮していたとしても新しい会社で同様に力が発揮できるかどうかはわかりません。一方で、既存の社員に対してリスキリングを通じて新たな技術を身につければ、社内異動だけで充足させることができるため、採用コストの大幅な削減が期待できます。
リスキリングのデメリット
導入負担が大きい
従業員に取り組んでもらうことで、当然既存業務への影響が生じます。例えば、1日3時間、新しい業務スキル習得に時間を使うと考えると、その3時間分の業務を他の社員が対応したり、8時間かけていた仕事を5時間で終わらせなければいけないという問題が生じます。このほかにかわる手段がなく、残業時間が増えてしまっては本末転倒です。リスキリングの導入を進めるためには、既存業務とのバランスを考えなければいけなくなるため、導入負担がかかりデメリットの要素となります。
従業員のモチベーション管理が難しい
従業員からすると、今まで業務で使っていた知識以外に新しい知識を習得するためには、負担がかかります。習得速度も従業員それぞれで差が出ることが考えられるため、遅れてしまった人材のモチベーション維持が難しくなることもあります。その場合の対策として、資格取得時のインセンティブ制度を設けたり、社内研修の強化を考える必要があります。
DX推進に必要な人材育成の課題とは
世界全体で見ると、DX推進は急速に進んでいますが、日本だけに注目するとそのペースは少し遅れています。IPAによるDX白書2023を参照すると、2022年時点で日本でDXに取り組んでいる企業の割合は、69.3%と、アメリカの77.9%に近づいてはいますが、DXの成果としては58%にとどまっており、アメリカの成果89%とは大きな差が見受けられます。
また、DXを推進していくためには先進的なデジタル技術やデータ活用が必要となり、同時に車内の業務内容を熟知してデジタル技術で何ができるかどこまでが限界なのかを把握している人材が欠かせません。しかし、現在の日本でIT人材の不足は深刻化しており、戦略的にDX推進のための人材育成や確保を進められない企業がほとんどです。この中でDX人材育成に求められる課題は以下です。
- システムだけでなく人材に投資する
- 社内での育成と外部リソース活用範囲の明確化
- ビジネスプロデューサーを社内で育成する
- 全社員にデータ活用の基礎的なことを習得させる
リスキリングを実行するためのポイント
リスキリングを実行するためのポイントは以下の3つです。
社員の自主性を重視する
リスキリングは、あくまで社員本人のスキル習得意欲がないといい結果にはつながりません。社員の学びたいという気持ちを優先して取り組みを進めるべきでしょう。
リスキリングの目的を明確にする
リスキリングによる習得したスキルが、企業にどのような効果をもたらすのか、どのような課題を解決できるのかを明確にしましょう。明確にすることにより、社員に有意義な時間として取り組んでもらえるようになるでしょう。
社員の貢献度を評価する
社員の自主性を重んじて、リスキリングの目的が明確になったら、そのスキルが会社に及ぼす貢献度を正当に評価する制度を設ける必要があります。通常業務のほかに、インセンティブ制度や評価項目の増加が必要です。
これからの時代に求められるプログラマーとは?
これからの時代に求められるプログラマーは、企業が求める最新技術へ直ぐに対応できるプログラマーです。
最新技術をDXと仮定した場合、DX人材に必要なスキルは以下のようなものがあります。
- 課題発見能力
- デジタル技術を用いた解決策を考える能力
- デジタル技術を用いずに解決策を考える能力
- 実際にデジタル技術を用いて課題を解決する能力
DX人材は、これらの能力をバランスよく持っていることが求められます。DXは企業文化や業態を根本的に変容させることを含む施策なので、全体的な状況を把握することが求められるからです。
まとめ
リスキリングについて解説してきましたが、理解を深めていただけたでしょうか。
リスキリングはDX時代に必要な人材として、新しいスキルを習得することです。
企業はリスキリングを実施することで、DXを進めることができたり、人材不足の改善などのメリットがあります。
また、個人としても将来的な選択肢が増えたり、自分の市場価値を高めるなど多数のメリットがあります。
企業としても個人としても多くのメリットがあるリスキリング、ぜひ検討してみてください。