今さら聞けないDXとデジタル化の違いとは?デジタル人材って?

近年、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進がおこなわれています。

DXとは本来、デジタル技術を用いて日常生活やビジネスに変革をもたらすことを指します。しかし、DXはIT化やデジタル化のことではないのか、AIを活用することだろう、といった意見を耳にします。

実際にはデジタル化とDXは全く異なることであって、親しい意味を持つ言葉ではありませんが、近年言葉が先行するような状況となっており、『草の根DX』のようなDXというよりはデジタル化に近い状態なのに『DX』というワードが使われていたりすることで更に誤解を生んでしまっています。

本来のDXの指すところをきちんと把握し、デジタル化との相違点を正しく理解しないと、DXを推進する上での方向性がずれてしまう恐れもあります。

そこでこの記事では、改めてDXの本来の定義・概要について解説し、デジタル化との違いについてもお伝えします。また、世の中に変革をもたらすDXを推進するためには、デジタル人材が必要不可欠です。

需要が急激に高まっているデジタル人材とはなにか、これからITエンジニアが目指すべく方向性についても触れていきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

今さら聞けないDX(デジタルトランスフォーメーション)

DXとは、「企業がデータやデジタル技術を活用し、ビジネスや生活に変革をもたらすこと」を指します。

経産省のガイドラインによれば、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」を指します。

単にデータやデジタル技術を利用することではなく、それを用いてビジネスに変革をもたらしていくことがDXの内実なのです。

経産省の「DXレポート」とはなにか?

日本においてDXを推進するうえで重要な指標となるのが、経産省が発表している「DXレポート」です。2022年4月現在では、最新版である「DXレポート2.1」までが公開されています。

DXレポートで指摘されているのは、「2025年の崖」という問題です。DX推進が進まず、大きな経済的損失が2025年を目途に起こるのではないか、という問題です。企業の既存システムの複雑化や老朽化といった事態が、その原因として指摘されています。また、最新の「DXレポート2.1」では、コロナ禍をふまえ、リモートワークの推進やデジタル化といったアクションが、企業に求められるようになりました。

日本企業がDXを推進していくうえで、重要な指標となる「DXレポート」。特に企業の経営者は、概要を押さえた上で経営戦略を確立していくべきでしょう。

参考:経済産業省DXレポート2.1(DXレポート2追補版)

明確に違うDXとデジタル化

DXと混同される言葉として、「デジタル化」という言葉があります。2つの言葉の違いを解説していきます。
「デジタル化」とは、既存の業務を、デジタル技術を用いた業務に置き換えることを指します。例えば、紙に印刷された契約書の作成業務を、電子契約を利用してインターネット上で行う業務に切り替えた場合、これが「デジタル化」です。

デジタル化は、「既存の業務を、デジタル技術を用いた業務に置き換える」ということが目的であり、その置き換えが達成された時点で完了します。

対してDXは、デジタル技術を用いるだけでは達成しません。そのデジタル技術を用いてビジネスモデルを変革し、新しい利益を生み出していく必要があります。

つまり、デジタル化がデジタル技術の活用をゴールとしているのに対し、DXはデジタル技術の活用をスタートとして、ビジネスの変容というゴールを目指していく考え方なのです。

DX推進しないとどのような問題がおこるのか

DX推進が叫ばれていますが、結局のところ、DX推進をしないとどのような問題が起こるのでしょうか?DX推進をしないことによる問題点は、経済的損失を生む可能性があること、そして大きなビジネスチャンスを逃すリスクがあることの2点に集約されます。

既存システムのレガシー化

まず一つは、既存のシステムが老朽化、複雑化していく「レガシー化」にあります。レガシーシステムの維持には予算も大きく投入されており、そのうえ業務効率にも影響を与えてしまいます。最終的に、このレガシーシステムが大きな経済的損失を与える可能性が指摘されています。

2025年の崖にも関連しているほどの大きな例としては、SAPユーザー企業様が迫られているいわゆる2025年保守切れ問題への対応があります。

市場の変化についていけない

既存のシステムを使い続けることには、市場に大きな変化が起こった場合に対応できないというリスクも伴います。グローバルな市場に進出することもできなくなるなど、大きなビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。システムを刷新し、市場変化に対応していくことが重要となります。

DX推進を阻害する要因とは

なぜDX推進が実現できないのか?

DX推進が進まないのは何故なのでしょうか?DX推進を阻害する要因についてご紹介していきます。

IT人材不足

1つ目の要因は、IT人材の不足です。DXを推進していくには、もちろんそれを担う優秀なIT人材の確保が必須条件になります。しかし、日本のIT人材不足は、年々深刻になりつつあるといわれています。

例えば、経済産業省が2019年に発表した見通しによれば、2030年までに最大約79万人のIT人材が不足するとされています。そうした事情を踏まえ、現在では各業界でIT人材の確保、育成が進められています。

そして、IT人材不足はDX推進にも確実に悪影響をもたらしています。総務省が2021年に行った調査では、企業でDXが進まない理由として最も多く挙げられたのが、「人材不足」です。実に半数以上の企業が、人材不足を理由にDXが思うように推進できていないのです。

2022年5月現在、制限は緩和されつつあり、今後、コロナ禍の収束に向かうことによって、経済活動が元に戻ってくるものと思われます。すると、消費が増え、小売業、サービス業を中心に人手不足はさらに加速することは目に見えています。小売業、サービス業では、そうなる前にDXで労働生産性を上げておく必要があることもあり、IT人材の需要も拍車がかかることは目に見えているのです。

IT技術だけでは実現できない

IT人材不足がDX推進を阻害する要因の一つではありますが、IT人材を確保すれば、それだけでDX推進ができるわけではありません。

DXの目的は、デジタル技術を用いて新しい利益を生み出していくことにあります。そのため、企業の経営層が、既存のビジネスモデルとDXによって生まれるチャンスとに目を光らせ、経営戦略を練らなければなりません。

実は、日本企業のDXが進まない要因は経営戦略、経営者の判断が遅いことに起因しているとも言われています。経済産業省はDXレポートを発表したりしましたが、DX推進の背中を押すほどの施策を見いだせていないことも要因の1でしょう。

IT人材の確保だけでなく、経営層をはじめとする企業全体で、DX推進を目指していく必要があります。

DX推進のプロセスとは

それでは、DX推進は具体的にどのようなプロセスで達成されるのでしょうか?一般に、次にご紹介する3つのプロセスを経ることになります。

デジタイゼーション

デジタル化とは

1つ目のプロセスは、「デジタイゼーション」です。
デジタル化という言葉に最も近いのが「デジタイゼーション」になります。

デジタイゼーションとは、「特定の業務」をデジタル化することです。例えば、今まで他社を訪問して行っていた営業や打ち合わせを、ビデオ通話塔を利用したオンラインの営業・打ち合わせに切り替えることがそれに当たります。

皮肉なものですが、コロナ禍によりオンライン会議、電子契約、ペーパーレスなどが加速したことで中小企業のデジタル化は急激に進みました。

DXを実現するための第一段階として、まずは特定の業務毎にデジタル化していくことが必要となります。

デジタライゼーション

2つ目のプロセスは、「デジタライゼーション」です。デジタライゼーションとは、特定の業務だけでなく、それら全体を通して業務フローやプロセスそのものをデジタル化していくことです。また、既存の業務を、デジタル技術を利用した業務に置き換えるデジタイゼーションとは違い、デジタル技術ならではの特性を生かして生産性の効率を図ることができます。

例えば、先ほどの例のように打ち合わせだけをオンラインで実施するのではなく、その打ち合わせの様子を録画し、上司からフィードバックをもらったり、改善点等をマニュアルとして整備し、新人の育成等に役立てたり、といった活動がデジタライゼーションに当たります。

デジタイゼーションが、特定の業務のデジタル化に限定されていたのに対して、デジタライゼーションはさらに進んで、デジタル技術ならではの利点を生かして業務プロセス全体の改善を図る段階と言えます。

デジタルトランスフォーメーション

最後のプロセスが、「デジタルトランスフォーメーション」つまりDXです。DXは、ビジネスモデルそのものをデジタルなものに変革し、そのうえでそれらを活用して新たな利益を生み出すことです。

例えば、オンラインでの打ち合わせをもとに作成されたマニュアルをデジタルコンテンツとして整備し、それをEラーニングの商材として販売することで利益を生み出す活動がDXにあたります。単にデジタル技術を活用するだけでなく、技術を利用してビジネスモデルそのものを変革すること、それがDXなのです。

DX推進を担うデジタル人材とは?

最後に、DX推進を担う「デジタル人材」について解説していきます。DX推進のためには、専門の人材の確保・育成が必須となります。

デジタル人材とは、AIやIoT、5G、RPAといった最新の技術を活用して、企業の成長を助ける人材のことを指します。最先端の技術について専門的な知見を身に着けたデジタル人材は希少価値が高く、求人倍率も一般的なIT人材に比べて高くなる傾向にあります。

デジタル人材は先端IT従事者ともいわれており、それ以外の人材は先端IT非従事者すなわち従来型人材と言われています。

経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」という報告書では2030年に最大79万人のデジタル人材が不足すると書かれているが、従来型人材は10万人余るとも記載されています。

企業の経営層の方々は、デジタル人材の採用に力を注ぐだけでなく、自社内のエンジニアへの教育やスキルアップも意識して戦略を練っていく必要があります。

なぜなら、デジタル人材の採用市場は激戦で転職エージェントを利用しても採用に至らないケースが大半を占めている状況です。

またエンジニアの方々は、自身の市場価値を高めるためにも、デジタル人材としてのキャリアパスも検討してみるとよいでしょう。

特にこれからITエンジニアを目指そうとしている方にとっては需要の高いデジタル人材を目指すことが必須となると予想されます。

経験者ITエンジニアの採用市場は、中小IT企業にとってかなり厳しい状況であり、多くの中小IT企業は中途採用を諦め、未経験者(コーディングスキルは習得している)へ範囲を広げ、入社後に学習する期間を想定して未経験者採用を行っているケースが急増しています。

まとめ

DX推進が叫ばれて久しい昨今ですが、特に日本経済を支えている中小企業のDX推進は、思うような成果を上げられていません。

最も大きな要因は、日本企業の多くは業務が属人的で標準化されていないこと、デジタル化により人手のかかる作業を軽減し生産性を向上することができていないことが考えられます。

わかりやすく言うと、日本企業は業務をデジタル化する際に、自社の業務に併せてパッケージのカスタマイズやシステム構築を行うため、初期開発費用も多くかかり、運用・保守にも大きな費用をかけ、パッケージを移管することもままならない状況になっているということです。何故か自社独自のシステムという名目が好まれるような環境であるのです。

例えば、パッケージを導入するのであれば、パッケージの標準機能に業務を合わせるようにすれば、日本企業が実現できていない場合が多い業務の標準化をすすめる事が可能です。また、パッケージの標準に沿うように業務を変革できるのであれば、カスタマイズ費用という高額な初期費用、運用・保守費用もかかりませんし、業務改善、生産性の向上すら実現できる可能性もあります。

デジタル化はDX推進に向けた最初のプロセスです。何から手を付ければ良いのかわからないと思われている経営層の方々は、まずはデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

デジタル化を実現することで最も大きな恩恵は、業務を標準化することができるということではないでしょうか。中小企業で多いのは業務が属人化してしまっている、業務フローがまとまらないといった生産性が上がらないといった悩みです。デジタル化するためには業務の標準化は必須ですので、自ずとデジタル化をするメリットを享受することができるでしょう。

また、エンジニアの方々も相談を受ける機会が増えていると思います。DXを推進する上でも必要とされるデジタル人材が圧倒的に不足している現在、どのようなキャリアパスを描くのか、今一度検討してみてことはとても大切なことです。

ITエンジニア(デジタル人材)として経験が積めれば、転職して年収アップを目指すことは大いに可能であり、キャリアアップが比較的に容易に実現できる業界です。将来の展望も明るいデジタル人材を目指し、日本の経済を促進するための一助としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

日本経済の促進のためにはDX推進が必要であり、最低でもデジタル化をすすめることは避けて通れない時代になっています。ますます需要が高まるITエンジニアも経験者層だけでは最大79万人とも言われるデジタル人材の不足を補うことは不可能です。今後、さらに未経験者からのジョブチェンジを求める企業も増加することは間違いないでしょう。未経験者であってもチャンスは増えていますので、検討してみてはいかがでしょうか。
需要の高い職種で働くことは貴方のキャリアパスにも大きく影響があるはずです。

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