新型コロナウイルスの影響により、多くの企業売り上げは昨年対比で減少しています。そんな中でECは活発です。JCBが発表した4月の国内業種別消費動向データによると、4月の小売全体の前年比消費指数は7.2%減なのに対し、ECは18.9%増になっています。
各種商品小売業(前年同月比23.6%増)を筆頭に全業種のECサイトの売上が前年対比増加していることがわかります。これは政府の自粛要請に基づいて実店舗がクローズしており、消費者はECサイトでの買い物にシフトしていることを示しています。
この傾向はwithコロナ、アフターコロナと表現されているニューノーマルの中でも続くのか、政府の自粛要請が解除されたらECサイトの売上は減少してしまうのか、今後の予測を見ていきましょう。
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1.ECサイトの利用者と支出額の増加
総務省の家計消費状況調査にてネットショッピングの状況の報告(二人以上の世帯が対象)がありました。利用者は初めての50%超えとなり、前年同月比は8.2ポイントと4月に続いての大幅上昇になりました。
1世帯当たりの利用額も4月に続いて上昇し、前年同月比16.5%増加で16,000円弱と年末商戦期(11~12月)に迫る勢いとなっています。利用額の内訳としては主に食料品や家電が増加の中心となっており、旅行関連(ネット予約やチケット購入)が大幅減少となっています。年代層別で見ると40代以下の伸びが大きいですが、50代以上でも前年同月比で減少している世代は無く、全年齢層で利用が増えた結果となります。
また、三井住友カード株式会社のレポートによるとECサイトの利用は非常事態宣言解除以降も堅調に伸びており、ECサイト以外では緊急事態宣言で急落・宣言解除で回復傾向となっています。
すべての消費におけるECの決済金額比率は2019年の20%前後から2020年4~5月で36%へ、解除後の6月初週でも32%と高い数字が維持されています。高年齢層のEC利用拡大もあり、今後もECサイトの成長が見込まれています。
2.ECサイトの発生課題
シャープが4月21日に始めたECサイトでのマスク販売についてサイトにアクセスが殺到し、ECサイトがアクセスできない事態となってしまいました。この時は販売開始からわずか6分でサーバがダウンしてしまっています。サイトが復旧次第販売を再開する予定だったもの、対応が遅れて結果的にドメインを変更して再開するなどの緊急対応を行うことになりました。
また、北海道のお土産の定番、“白い恋人”で知られる石屋製菓のイシヤオンラインショップにて5月4日より販売した「白い恋人で北海道にエール!BOX」の販売ページについても、イシヤオンラインショップへのアクセス集中によりサイトへのアクセスがしにくい状況が発生しました。
今後もECサイトの需要が拡大していく見込みであることがわかっている中で、この様なECサイトの問題の回避を含めて、あらゆる企業がECサイトの強化に取り組むと思われます。そこで、ECサイトを構築するエンジニアの業務内容とその魅力をお伝えします。
3.ECサイトを作っていく上で必要となるエンジニア職
ECサイトはユーザがアクセスするユーザインターフェースと、それを処理するデータベースやアプリケーション、それを動かすためのハードウエアやネットワークから構成されます。そのため、ECサイトをつくる為のエンジニア(Webエンジニア)にはそれに応じて大きく4つの職種があります。
(1)フロントエンドエンジニア
(2)バックエンドエンジニア
(3)インフラエンジニア
(4)セキュリティエンジニア
(1)フロントエンドエンジニア
ECサイトの利用者がPCやスマホから商品選択をして、購入するまでの動線の全ての画面を開発担当するのがフロントサイドエンジニアです。
ここでは、HTML,CSS, JavaScriptなどのスキルが必要になります。
先のデータの通りECサイトの利用者年齢層が広がっているため、いわゆるUI/UXを重視するデザイン力やセンスが大変重要になります。「UIが優れている=使いやすいECサイト」であり、購入プロセスが簡単であることで“また購入したい”と利用者に感じていただくUXが高まることがECサイトの売上に大きく影響するからです。
(2)バックエンドエンジニア
ECサイトの利用者が目にすることのない部分、サーバーとのやりとりやデータベースなどの管理や構築を行うのがバックエンドエンジニアです。ECサイトの会員のログインの認証、購入、決済の処理などが該当します。
ここでは、PHP,Pythonやデータベースのスキルが必要になります。
それぞれの処理方法を適切に開発しなければ、先の例のようにアクセスが集中した場合にページにアクセスできなかったり、サーバダウンに繋がるリスクもあります。そのため、キャパシティを考慮した性能を考えるスキルも必要です。
(3)インフラエンジニア
IT業務における基盤とはネットワークやサーバーのことを表すことが多いですが、それらの設計や構築、日々の運用を行うのがインフラエンジニアの役割です。
Webサイトは365日24時間サービスを提供していますので、それらの監視や保守を行い、不具合やトラブルがあった際の対応も行います。ECサイトの商品やインフラの更新が発生した場合の変更管理も運用保守エンジニアが対応します。
ネットワークやサーバの知識に加えて、自社のECサイトのシステム構成を十分に理解する必要があります。
(4)セキュリティエンジニア
ECサイトを狙ったハッキング行為やコンピュータウイルスによる事故は毎日ように発生しています。自社のECサイトがそのようなリスクを最小化する為には、セキュリティの専門家が必要です。例えば、データベースへの不正アクセスを可能にする“SQLインジェクション”といった典型的なハッキングを回避するために、フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニア・インフラエンジニアに対してそれぞれガイドラインを用意する必要があります。
完成されたECサイトのテストの中に脆弱性診断などを行うときもセキュリティエンジニアが対応します。
4.Webエンジニアへの転職を考えるべきなのか
ご紹介したWebエンジニアは超売り手市場になっています。リクルートキャリアの転職求人倍率では、Webエンジニアを含むインターネット専門職はあらゆる業界の中で最も高い転職有効求人倍率となっています。ECサイトの重要性が益々増えてきていることはお伝えした通りのため、この傾向はさらに進むと思われます。
また、年収についてもTech総研調査の結果では、30代前半で平均530万円であるものの、30代後半で平均620万円までアップしています。
withコロナ、アフターコロナの状況下Webエンジニアは最も重要視されている職種であることがわかりました。
まとめ
今回は政府の自粛要請に基づいて実店舗の営業が停止したため、ECサイトでの売上が大幅に拡大していることを確認しました。この記事を執筆した2020年7月下旬でも、コロナウイルス感染のリスクは全く衰えていません。第二波が危惧される現状でもあり、“買い物をECサイトで済ませたい“という消費者の要望はますます増えています。
ECサイトは企業の売上を支える大きな柱になっていくことでしょう。そこでは、Webエンジニアの需要が比例して高まっています。
Webエンジニアには、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、インフラエンジニア、セキュリティエンジニアという4種類の職種が存在し、それぞれの特異性を活かしたスキルを発揮することで堅牢で安全で分かりやすいECサイトを構築・運用することができます。既にこれらのスキルを身に着けているエンジニアは転職を考えた際に優位に立った転職ができるでしょう。まだスキルが身についていない方は、今後の方向性の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。