近年、AIの急速な発達により、さまざまなツールやシステムにAIが組み込まれています。すでにAIを用いたアプリケーションを構築した経験があるITエンジニアも多いでしょう。
AIに関わる職種をAIエンジニアといいます。AIエンジニアは大学院レベルの専門知識や実績を必要とするため、一般的なITエンジニアでは勤まらないといった意見もあるようです。未経験からでも目指せるのか、気になるところですよね。
この記事では、AIエンジニアの仕事内容や必要な知識・スキルなどについて詳しく解説します。年収事情やAIエンジニアになるための方法についても触れているのであわせて参考にしてみてください。
Contents
AIエンジニアとは?
まずは、AIエンジニアの概要をはじめ、従来のITエンジニアとの違い、年収などを解説していきます。
AIエンジニアの概要
AIエンジニアとは、AI(人工知能)の活用に関して研究・開発する仕事です。
問題解決の手順であるアルゴリズムを考えながら、顔認証や自動車の自動運転など、さまざまな業界のシステムにAIの技術を実装していきます。
スーパーコンピューターなどを使って教師データ(例題と正解がペアになった形式の学習データ)を投入し、AIが診断・判定する精度を高めていきます。
最終的に、教師データ以外のデータを投入して検証し、完成したシステムを納品します。
ITエンジニアとの違い
近年、AIやIoT、ビッグデータなどの最新技術を扱うITエンジニアを「先端型IT人材」、最新技術を用いないITエンジニアを「従来型IT人材」と区分するようになりました。
つまり、AIエンジニアと通常のITエンジニアの違いは、最新技術を扱うかどうかです。
これまで先端型IT人材は人材不足が懸念され続け、2030年には55万人が不足すると日本経済新聞(2019年4月24日付)でも報道されました。
人材不足が解決できない理由は、IoTの技術が発達し、製品がインターネットにつながるようになり、データを収集しやすくなったことが背景として考えられています。データを処理できる人材の教育が追いついていないようです。
今後もIT人材の需要構造が変化し、従来型IT人材よりも先端型IT人材の需要が高まる見通しとなっています。
AIエンジニアの年収
AIエンジニアは年収が高いことでも話題となっています。
理系プロフェッショナルの採用プラットフォーム「転職ナビ」を提供するアスタミューゼ株式会社は、自社が保有する求人データをもとにAIエンジニアの年収を分析しました。
求人に設定されている年収の上限額の平均値は914.3万円、下限額の平均値が495.6万円であり、各社のAIエンジニアに対する採用ニーズが高いことがわかりました。
参考:平均年収、募集業種、技術・スキル、平均年齢、企業規模などを分析。(PR TIMES)
AIエンジニアの仕事内容
AIエンジニアの仕事内容はAIの開発、AIの学習、データの分析に分かれます。それぞれの仕事内容を解説していきます。
AIの開発
クライアントの課題をヒアリングし、開発すべきAIシステムとその効果を明確にします。そして、クライアントから提供されるデータを確認してAIシステムの開発に着手します。
マシンの性能が低い場合、データを処理できないリスクも高いです。そのため、処理性能を考慮しながらアルゴリズムを最適化しなければなりません。
AIの学習
教師データを投入して判定の精度を何日もかけて高めていきます。
たとえば、猫の画像データを投入して、正解・不正解の判定を繰り返させることで、猫の形を覚えさせていきます。
目標とする正解率に到達したり、エラー率が低下したりした段階で学習完了です。
AIの検証・成長
AIの学習が完了したあとはAIを検証します。AIに検証用のデータを投入して診断・判定をさせ、さまざまな分野の専門家やエンジニアを交えて検証します。
検証したAIシステムを納品したあとも、運用中の最新データからAIを成長させ、システムを最適化していきます。
AIエンジニアに必要なスキルや知識
AIエンジニアは与えられたデータを処理するのに最適なアルゴリズムを検討します。したがって、アルゴリズムの考え方を習得しておくことが重要です。
アルゴリズムは、1行1行コンピューターの処理を積み重ねた記述です。途中で処理が分岐したり、繰り返されたりするので、初心者ではトレースするのが難しくなっています。そのため、プログラミング学習を行う過程で、トレースの訓練が必要です。
また、AIエンジニアは特定の分野において専門知識が求められることがあります。
たとえば、農業の分野では作物の特徴や収穫時期、病害虫、除草剤などの知識が必要です。医療の分野では、レントゲンやポリープ、がん、内視鏡などの知識が求められます。
したがって、業界ごとに必要な知識をスムーズに習得できる学力も重要です。
AIエンジニアの将来性と需要
AIエンジニアの将来性と需要を知るために、AI市場規模の予測を確認してみましょう。
独立系ITコンサルティング・調査会社の株式会社アイ・ティ・アールによるAI市場規模の予測は下記の通りです。
年 度 | 市場規模(単位:億円) |
---|---|
2022年 | 約750 |
2023年 | 約900 |
2024年 | 約1050 |
2025年 | 約1200 |
AI市場規模は着実に拡大していくと予想されています。AIエンジニアの将来性は明るく、需要も高まるでしょう。
参考:ITRがAI主要8市場規模推移および予測を発表(アイ・ティ・アール)
AIエンジニアになるために役に立つ資格
AIエンジニアになるためには特別な資格は現状としてありません。
ただ、AIの分野ではPython(パイソン)というプログラミング言語が用いられます。
したがって、Pythonに関係する資格が役に立つ可能性があります。関連資格として挙げられるのがPythonエンジニア認定試験です。
Pythonの専門知識を評価する試験であり、データ構造や入出力、エラー、標準ライブラリなどの基礎文法を学習できます。
また、AIエンジニアはアルゴリズムの考え方も習得する必要がありました。アルゴリズムを学べる資格として基本情報技術者試験がおすすめです。
現実で想定される処理をテーマとした問題が出題されます。たとえば、最短経路とその距離を求めるアルゴリズムの問題が過去に出題されました。アルゴリズムの実践的な考え方を学べるでしょう。
未経験からAIエンジニアはやめとけって本当?
AIエンジニアは需要が高い職業ですが、未経験でも目指せるのか気になるところでしょう。
AIエンジニアとして採用される人材は、大学院の情報系学部で修士や博士号の取得をしている方が多いといわれています。新卒採用では、大学における研究実績や国際学会での発表などが評価される傾向です。
関連技術が急激に発展している分野なので、採用後においてもWebで公開されている論文を読んだり、大学や研究機関の研究者と意見交換したりする必要もあります。
“やめとけ、と言いたいわけではないですが業界未経験からAIエンジニアに転職するのはかなりハードル高いです。
僕もゆくゆくはAIエンジニア志望だったのでいくつか企業受けましたが未経験だと厳しいと言われました。”
実際に、AIエンジニアを未経験で目指したけれど、企業から未経験だと厳しいと断られてしまった方も珍しくありません。
AIエンジニアは大学院レベルの専門性や実績が求められる仕事なので、「AIエンジニアはやめとけ」という人が一定数存在しているのでしょう。
まとめ
AIエンジニアは、人手不足が確定している職種です。しかし、高度なスキル・知識を必要とするため、目指している人が急激に増える状況にはならないでしょう。
需要が高く年収も高い傾向なので、困難な道ですが目指す価値はありそうです。
すでにITエンジニアとして活躍されている方は、AIを活用しているIT企業に転職し、徐々にAIに関わっていきながらAIエンジニアを目指すという道もあります。
もし、AIエンジニアのキャリアパスを検討しているのであれば、ITエンジニア専門の転職エージェントに相談してみるといいでしょう。
AIに関連した求人情報も持っており、さらにはAI業界未経験でも転職できる方法などについてもアドバイスを貰える可能性が高いです。専門家のサポートをもとに、少しでもAIに関われるチャンスを探ってみてはいかがでしょう。