コロナ禍で活用したい失業保険と給付金の特例

新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした政府の自粛要請は解除となりましたが、外食・小売業界を始めとして企業の業績は新型コロナウイルス発生前の状況に戻っていません。また、休業期間中に従業員に対しても休職、場合によっては人員削減を行わざるを得ない事態に追い込まれていること、日々報じられていました。

こうしたコロナ禍の影響を受けて失業してしまった場合に活用できる政府の制度が「失業保険」です。失業保険は、雇用保険に加入している人が、失業し次の仕事を探すまでの国の支援策として制度化されています。どのような人が失業手当を受け取れるのかを確認すると共に、新型コロナウイルスの影響で変更点はあったのかなどを解説していきます。

1.コロナ禍での失業数・有効求人倍率の状況

まず、政府の休業要請によって完全失業者数がどうなったのかから確認していきます。2020年1月には失業者数がマイナスであったのに対して、5月には33万人にまで急拡大しています。明らかに政府の休業要請を受けた事業者による影響が失業者数に反映されていることがわかります。

更に有効求人倍率の推移を確認すると、2020年1月には、1.4倍程度あった正社員の有効求人倍率は6月時点では、1.06倍まで急下落しており、新規採用の枠は狭くなってきていることがわかります。
失業者は増え、新規採用の枠は減る一方になると、なかなか新しい職に就けない求職者が増える一方になってしまいます。

失業率の高さと有効求人倍率の低さは、IT業界で働く会社員やフリーランスの方にも影響しています。特に、フリーランスとして企業から業務委託を受けている方は、コロナ禍による業務の減少、停止を要求されている場合も少なくありません。

ウィズコロナ・アフターコロナと言われる現状では、退職された方がすぐに新しい仕事を見つけることは難しいこともあるでしょう。政府もこの緊急事態に対して、失業保険と給付金を特別措置として広く提供しています。
そこで、失業保険と給付金について、どのような方が対象となるのか、何が特別措置となっているのか見ていきましょう。

2.失業時の手当(コロナ禍以前)

コロナ禍以前では、失業手当をもらうために3つの条件が必要でした。
①雇用保険に加入していること
②雇用保険に加入していた期間が、退職前の2年間で12ヶ月以上あること
③再就職のための活動をしていること

また、被保険者に加入していた期間に応じて、失業手当を受け取れる日数が決まっていました。(自己都合の場合)
・1年未満      なし
・1年以上10年未満  90日分
・10年以上20年未満 120日分
・20年以上     150日分
(失業手当を受け取れる期間は、原則として辞めた日の翌日から1年間)

3.失業時の手当(新型コロナウイルスの影響に対する特別措置)

先の通り、新型コロナウイルスの影響により失業する人が増え、有効求人も減少していることから、求職活動が長期化する可能性が高くなります。政府が打ち出した支援策として、新型コロナウイルスの影響に対する様々な特定措置を適用することになりました。
給付期間の延長・給付制限が行われない、そして“みなし失業”の適用です。

①給付期間延長措置

失業手当の給付日数を原則60日延長する「特例延長給付」が規定されました。
その対象者は、2020年6月12日以降に失業手当の所定給付日数を受け終わる、求職活動を行っている人が対象です。延長については日数が異なるケースもあるため、

②給付制限が行われない措置

2020年2月25日以降に以下の理由により離職した人は、特定理由離職者として扱うことにより給付制限の期間が設けられないことになりました。

・家族が新型コロナに感染したことによる看護介護が必要になった
・本人の感染による自己都合退職
・感染の影響により子供の養育が必要になった

③みなし失業でも失業手当対象

政府の休業要請期間中には、従業員への給与が支払えなくなった、という飲食店等の小規模事業者が連日の様に報道されました。新型コロナウイルスの影響により休職を余儀なくされた従業員は休職手当を受け取ることが出来るのですが、政府の雇用調整助成金がキャッシュフローや書類の煩雑さから利用されず、未支給となる事例も多数発生しています。そこで、雇用保険から「みなし失業」として直接休業手当を支給する制度が追加されました。

このように、失業者に対する手当ての条件が特別措置として緩和されたことで、一定の安心感をもって次の仕事を探すことができる様になりました。休業についても支給保障がされることで不安の払しょくに一役買っています。ただ、みなし失業の休業手当については対象が基本給となるため、常駐手当が大きな支給となっているSESエンジニアは苦しい立場にあるとの話も聞こえてきます。

④労災との関係性

新型コロナウイルスに関連して失業した場合に、もう1点気になることがあります。自身が企業での就業期間中に新型コロナウイルスに感染した場合は、いわゆる労災の対象となるのか?という点です。
厚生労働省では、業務に起因して新型コロナウイルスに感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象であると伝えています。既に1000件近く、「新型コロナウイルス感染症に関する労災」が請求されています。

万が一、ご自身が就業中に新型コロナウイルスに感染したことが起因して企業を退職することになった場合には、労災による補償と失業手当の特別措置の両方が適用されることになりそうです。ただし感染経路の確認が入るため、不用意に感染しやすい場所に行かない等、行動には注意した方が良いでしょう。

4.フリーランスにとっての失業手当・給付

IT業界においても、新型コロナウイルス感染の影響により自身や家族をサポートする必要があり、どうしても会社を辞める会社員の方もいらっしゃいます。企業の業績不振による会社都合の退職のケースと共に、これまでの説明の対象となります。しかしながら、IT業界では個人事業主として活躍している“フリーランス”の方への影響が大きいようです。

フリーランスへの事業紹介を行っているINTLOOP株式会社が「現在の仕事への新型コロナウイルス感染症の影響の有無」を聞いたところ、全体の77%のフリーランスが「影響がある」と回答しました。一番多い影響は「仕事を行う環境が変わった(リモートワークなどの実施)」という回答でしたが、「決定していた仕事が無くなった」という方も全体の12%いるようです。

フリーランスは個人事業主ですから、一般的には失業保険の対象になりません。しかし、代わりに政府の休業要請に応じた店舗へ給付されるということで注目された「持続化給付金」が対象となります。1度のみではありますが、上限額100万円までで給付されます。

フリーランスだった方が、仕事が無くなったことにより改めて企業への就職を探している場合に失業保険を貰えるのではないか? または、企業をやめてフリーランスとして働き始めた直後に新型コロナウイルスの影響によって仕事がなくなった場合、持続化給付金がもらえるのか? といった、例外的なケースについては個別にハローワーク確認が必要となります。

5.フリーランスへの休業補償

政府の失業手当、給付金を中心に確認してきましたが、民間企業でも休業に対する補償を実施している例があります。

バレットグループ株式会社では、在宅におけるリモート作業不可、在宅リモート作業環境整備までの期間、派遣先クライアントのご都合により休業を余儀なくされたフリーランスエンジニア契約単価の60%を上限とした休業補償を実施しています。

まとめ

コロナ禍の影響を受けて、政府の特別措置が制度化されたことを確認しました。
失業保険については給付期間の延長・給付制限が行われない、そして“みなし失業”の適用がされたことにより、新しい仕事が見つかるまでの一定の安心感を得られるようになりました。一方で、個人事業主となるフリーランスの方に対しては、持続化給付金が支給されたことで、こちらも仕事が減ってしまった期間の補填をすることができます。

新型コロナウイルスの感染は既に第2波に入ったと報道されており、まだまだ収束が見えない状況です。
そのため、求職活動そしてフリーランスの方にとっては受託業務の再開が進まないことがあるかもしれません。各施策とも秋に終了日程が組まれていますが、この先も政府の緩和策が継続されるのかどうか情報収集を行い、積極的に制度活用をしていきたいものです。
そして、ウィズコロナの現状を乗り切っていきましょう。

<参考>
独立行政法人労働政策研究・研修機構

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