プログラマーの転職には手間と時間がかかるものです。プロジェクトの区切りがついたタイミングで退職しようとしても、不具合が見つかってしまい予定通り退職できない、といった話はよく耳にします。
テレワークを導入するIT企業が増えたことから、退職時の手続きが煩雑になり、必要な書類などが退職までに用意されないということもあるようです。退職時に受け取る書類の1つに源泉徴収票があります。転職が決まっている場合は、転職先から提出を求められるはずです。
しかし、源泉徴収票について詳しく理解していない人も多いのではないでしょうか。税金に関する書類は扱いが難しく、正しく手続きをしないと余計な手間がかかったり、損をしたりすることもあります。
この記事では、退職時に受け取る源泉徴収票についてくわしく解説します。
Contents
源泉徴収票とは?
ここでは、源泉徴収票の概要を解説します。源泉徴収票は、会社から支払われた給与などの支給額と、差し引かれる所得税の金額が記載された書類のことです。
源泉徴収票とは
源泉徴収票は、会社から自分に支払われた給与・賞与・退職金などの総支給額と、その総支給額から差し引かれる所得税の金額を記載した書類です。自分がどのくらいの金額を企業から受け取ったのか、そしてどのくらいの金額を税金として納めたのかを把握できる書類です。
所得税などの納税は本来、納税者である個々人が行わなければなりません。しかし、個人が全ての手続きをするには手間もかかり、漏れが発生する恐れも大いにあります。そこで、企業が従業員に対して支払う給与から税金を差し引き、まとめて納税する仕組みが採用されています。源泉徴収票は、この納税額を確認するための大切な書類なのです。
転職時に必要な源泉徴収票は「給与所得」と「退職所得」の2種類
源泉徴収票には「給与所得」「退職所得」「公的年金等」の3種類がありますが、転職時に必要になるのは「給与所得」と「退職所得」の源泉徴収票です。
「給与所得の源泉徴収票」には、1年間に支払われた給与の総額と所得税の徴収額などが記載されており、会社員として勤めている間は毎年、年末調整後にもらえます。年末調整とは、毎月支払っていた所得税の額を正確に計算し直して精算することです。所得税の納付額に不足があれば追加で徴収し、払い過ぎていれば還付されます。
「退職所得」の源泉徴収票には、退職手当の金額や所得税の徴収額などが記載されています。退職手当が支給された場合にもらえます。
源泉徴収票で確認しておくべきポイントとは
源泉徴収票を受け取った時は、必ず給与支払額や控除額といった金額に間違いがないか、確認しておきましょう。給与所得額や退職手当の明細と照らし合わせてチェックしなければなりません。
また、退職の際には源泉徴収票の交付がいつ頃になるのか確認しておきましょう。転職先への提出や失業給付の申請のためにも必要になります。
源泉徴収票が必要になる時とは
転職時以外にも源泉徴収票が必要な場面を経験された方は多いと思います。ここでは、源泉徴収票が必要になるのはどのような時か、ご紹介します。一般に、以下の3つの場合には源泉徴収票が必要になります。
- 転職した時
- 確定申告する時
- プライベートな手続きがあった時
転職した時
転職した時、多くの場合は源泉徴収票が必要になります。転職先の企業で、前の会社での給与も含めて年末調整を行わなければならないためです。
例えば、2022年の7月に前職を退職し、2022年の8月から新しい会社に転職したとします。その場合でも年末調整は行わなければなりませんが、前職は既に退職しているため、2022年1月から2022年7月までの期間の収入についての年末調整を行うことはできません。転職先の会社で前職での収入も含めた年末調整を行わなければならないため、その際に前職の源泉徴収票が必要になります。
また、テレワーク時の退職について、更に詳しく知りたい場合は「在宅勤務中の退職はどうすればいい?通常勤務と何が違うのか」をご覧ください。
確定申告する時
確定申告する際にも源泉徴収票が必要になります。副業で一定額以上の収入がある方や、会社を辞めてフリーランスになった方などは、自分で税金を納めなければなりません。確定申告とは、自分の収入と税金を計算して精算する手続きのことです。この確定申告にも、源泉徴収票は必要です。
プライベートな手続きがあった時
プライベートな手続きの中にも源泉徴収票が必要になるケースがあります。例えば、住宅ローンの審査を受けたい時の収入の証明や、医療費控除を受ける時などに提出を求められることがあります。
源泉徴収票がもらえないケース
転職する際、退職する企業から源泉徴収票がもらえないケースも稀にあります。ここでは、源泉徴収票がもらえないケースと、その時の対応について解説します。一般に、源泉徴収票がもらえないケースは以下の2パターンです。
・会社そのものが倒産や吸収合併でなくなってしまった
・退職した会社が発行してくれない
会社そのものが倒産や吸収合併でなくなってしまった
退職した会社が倒産してしまったり、他社に吸収合併されてしまったりと、会社の存在そのものがなくなってしまった場合には、源泉徴収票をもらえないこともあります。会社自体が存在しないため、連絡をとる窓口が存在しないケースです。
退職した会社が倒産してしまった場合は、「破財管理人」への依頼を第一に検討してみましょう。「破財管理人」とは、倒産した企業の財産を管理してくれる弁護士のことです。この破財管理人に依頼することで、源泉徴収票の交付を請け負ってもらえる場合があります。
退職した会社が発行してくれない
基本的に、源泉徴収票の交付は法律で義務付けられています。企業は退職した従業員に対しても源泉徴収票を必ず交付しなければならず、通常は退職から一ヶ月以内には送付されるはずです。
もし源泉徴収票が一向に送られて来ない場合は、退職した企業に電話やメールで問い合わせることをおすすめします。
もし入手できない場合は税務署に相談してみよう
破財管理人が見つからない場合や、企業と連絡がつかない場合、催促しても一向に源泉徴収票が送付されない場合は、税務署に相談すると良いでしょう。その際、「源泉徴収票不交付の届出書」という書類を提出することになります。会社がまだ存在している場合には、税務署から税務指導が入り、すぐに源泉徴収票が交付される場合があります。
会社が存在しない場合も、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することになります。この場合、前職の給与明細など、所得を証明する書類が必要になるため、日頃から給与明細などは管理しておかなければなりません。
源泉徴収票についてのよくある質問
源泉徴収票についてのよくある質問を2つご紹介します。
・源泉徴収票を紛失してしまったらどうする?
・転職先に源泉徴収票を提出しないとどうなるのか?
源泉徴収票を紛失してしまったらどうする?
源泉徴収票を紛失してしまった、という方は多いのではないでしょうか。前職の退職から転職先への入社に時間がかかってしまった場合など、源泉徴収票を受け取ったはずが見当たらない、ということはよくあります。
源泉徴収票を紛失してしまった場合は、退職した会社に再発行を依頼しましょう。企業には源泉徴収票を発行する義務があるため、断ることは原則できません。郵送費の負担を求められる場合もありますが、基本的には対応してもらえるはずです。仮に対応してもらえない場合には、会社が倒産した場合などと同じく税務署に相談すると良いでしょう。
転職先に源泉徴収票を提出しないとどうなるのか?
前職について知られたくない場合や、なんらかの理由で休職していたことを隠したい場合など、転職先に源泉徴収票を提出したくない方もいるでしょう。源泉徴収票を提出せずに済ませたい場合は、自分で確定申告をしなければなりません。
転職先への源泉徴収票の提出は、前職での所得を含めた年末調整を行ってもらうためです。自分で確定申告をして所得と税金を精算してしまえば、転職先で改めて年末調整を行ってもらう必要はなくなります。転職先に源泉徴収票を提出しなくても、確定申告をすれば問題ありません。ただし、確定申告を忘れると脱税になってしまう恐れもあるため、注意しましょう。
また、退職時の手続きなどについて、更に詳しく知りたい場合は「退職手続きチェックリスト!返却物や受領物、その後の流れを確認」をご覧ください。
まとめ
この記事では、源泉徴収票について解説しました。給与の総額と所得税額が記載されている源泉徴収票は、転職先の会社で年末調整をしてもらうために必要となる書類なので、忘れずに受け取るようにしましょう。確定申告の際も必要な書類になるため、保管にもしなければなりません。
基本的には源泉徴収票の発行は企業の義務なので、発行依頼には対応してもらえるはずです。連絡がつかない場合など、困った時は所轄の税務署に相談してみましょう。また、毎年なんとなく受け取っていた源泉徴収票を、紛失してしまう方も多いと思います。しかし源泉徴収票は、転職する時や確定申告の時など、様々な場面で必要なる書類です。大切に保管しておきましょう。