ITエンジニアの転職は売り手市場という話を耳にして、ただ漠然と「今と違うIT業界へ転職しよう」と考えている人も多いのではないでしょうか。
IT業界は資格よりも経験を重要視する傾向にあるので、経験やスキルのある方であれば需要は高く、転職の実現は難しくないかもしれません。しかし、転職先の企業が最適かどうかはわかりませんよね。
IT企業の数が増加し続けていることにより、求人数も比例して増えています。しかし、なかなか転職が決まらない人や、転職してもすぐに辞めてしまう人が跡を絶ちません。
実は、転職を失敗したと感じる人には共通の理由があるようです。
この記事では、ITエンジニアが転職に失敗する理由とともに転職を成功させるコツを解説します。
ITエンジニアが転職に失敗する理由
まずはITエンジニアがよく耳にする転職に失敗する理由をご紹介します。
理由1.仕事内容に対する認識不足
ITエンジニアに転職しても、開発以外の雑用や打ち合わせが多くて、開発作業(コーディング)に専念できないケースは珍しくありません。
自分がやりたい仕事ができないと、こんなはずではなかったとストレスを感じ続けることになります。
また、入社後に使用するプログラム言語は使ったことがない言語だった、プログラマーで入社したのに初めにテスト工程を担当させられているなど、事前に確認しておくこともできたのに、確認不足のため想定と違ったということになってしまいます。
理由2.知名度や雰囲気に惑わされる
有名な企業のグループ会社でも、入社してみてから勤務環境が悪いことが判明するケースは珍しくありません。
また、デザインがオシャレな雰囲気の会社でも、実際は殺伐した会社でリラックスして働けないケースもあります。
IT企業の事務所はフリーアドレスでカフェ風の内装でといったイメージがあるかもしれませんが、社風や勤務環境は事務所の内装とは関係ないので転職の際には注意するべきポイントです。
理由3.相場以上の年収に疑問を抱かない
年収が相場以上でも、実は月給に固定残業代が含まれていることで、年収が高くなっているケースがあります。
もし、求人の情報を見落としていたら、入社後に残業について不満を抱いてしまいかねません。
固定残業代が含まれていないにも関わらず、相場を超えるような年収の場合には注意が必要です。貴方の職域が想定しているものと違っているか、明らかに入社までのコミュニケーションに齟齬があり想定以上の業務が降り掛かってくる可能性があります。
背伸びしてなんとかなるような内容でしたら、解決できるかもしれませんが、全く経験のない業務などを担当することになったら、責任問題になりかねません。
理由4.未経験者歓迎につられて入社する
未経験歓迎の求人は応募しやすく、あっさりと内定がもらえることも少なくありません。
しかし、入社後の研修期間が短かく、仕事がわからない状態で派遣先に放り込まれて、後悔してしまうことがあります。
入社時のハードルが低い企業は、採用後に一定割合の離職者がでることを前提としてふるいにかけられている可能性があります。
未経験でも課題をクリアできるような自己解決能力の高い人を選定し、あとは退職してしまっても仕方ないと、企業側の研修制度は整っていないことがありますので注意しましょう。
理由5.スキルが足りないのに内定を承諾した
企業が想定していた以上にスキルが不足すると、客先で話していることが全く理解できず、仕事に支障をきたしてしまいます。
最悪のケースでは、プロジェクトから外されてしまうこともあるようです。内定をもらえたからといって、うかつに承諾しないように注意が必要です。
入社後に担当する業務内容については、しっかりと確認した上で、対応できることを把握しておくことが大切です。
ITエンジニアが転職後に感じるよくある失敗
ITエンジニアが転職後に感じるよくある失敗をご紹介します。
失敗1.入社時の年収に不満が生じる
転職することを優先してしまい、前職より低い年収を提示されたが了承してしまったという人もいるでしょう。
ITエンジニアが転職をするときは、必ずしも年収が上がるとは限りません。企業が求めるスキルレベルを満たせていなければ、入社時よりも年収が下がることがあります。
入社後の昇給制度が明確でなかったり、入社後に新たなスキルを学べる環境でないとわかれば、妥協した年収に対して不満を抱えてしまうでしょう。
失敗2.残業が多くて帰宅時間が遅くなる
受託開発企業に転職した場合、顧客の設定した納期を守る必要があり、場合によっては残業をせざるを得ない場面があります。帰宅するのが22時以降になってしまうケースも少なくありません。
そういった場合、システムエンジニアのスケジューリングに問題があったか、プロジェクトメンバーの力不足などによって残業してカバーしてしまうといったケースが多いようです。
また、顧客と折衝しているシステムエンジニアが仕様変更や仕様追加などの顧客のわがままをそのまま受け入れてしまい、想定以上の業務量が発生してしまい、プログラマーがカバーするといったこともあります。
そのほか、顧客の都合によっては休日出勤を余儀なくされることもあります。
失敗3.客先常駐の働き方に馴染めない
ITエンジニアの転職では、SESを主体とした企業も多く、初めて客先常駐を経験することもあります。
SESの場合はチームで参入することもありますが、1人で常駐することもありますので、自社社員ではない人たちと常にコミュニケーションをとらないことにストレスを感じることも多いようです。また、コミュニケーションが取れてきたと思っていたら、次の常駐先に異動になったというケースも少なくなく、こういったSES特有の流れにストレスを感じる人も多いようです。
常駐先で気軽に話せる社員を見つけられない場合、その場にいるだけで疲れてしまうことも珍しくありません。
失敗4.仲間意識の社風が自分にあわなかった
未経験者の視点では、ITエンジニアは黙々と自分一人で開発作業を進める職種であり、チームワークが求められないように思えるかもしれません。しかし、IT企業の職場ではチームで開発を進めるのが基本です。
チームワークを高めるために、必要以上に飲み会を多く開催している企業も珍しくありません。仲間意識の社風が重荷になってしまうことがあります。
また、よく求人情報に「アットホームな雰囲気です。」といったコピーを目にしますが、和気あいあいとしているのかと思って入社したら、いろいろな場面でプライベートまで踏み込まれてストレスが増えてしまったというケースもありますので、入社前に確認しましょう。
転職で失敗しないようにするためのポイント
ここまでITエンジニアが転職で失敗してしまう理由や、よくある失敗などを解説しましたが、どうすれば転職の失敗を回避できるのでしょうか? 引き続きITエンジニアが転職で失敗しないようにするためのポイントを解説していきます。
ポイント1.転職の目的を明確に決めておく
達成したい目的があると、仕事を継続するのに必要なモチベーションが高まります。
たとえば、プログラミングスキルを身につけることを目標にしたとしましょう。仕事で多少嫌なことがあっても、プログラミングスキルを習得するという目的を果たせていれば、仕事を継続しやすくなります。
年収アップや将来的な独立、自己実現など転職の目的はさまざまあるでしょう。いずれにせよ、すぐに辞めるたくなる原因よりも、達成したい目的が大きくなるように、転職の目的を設定しましょう。
ポイント2.自己分析をしてから求人を探す
転職で失敗しないようにするためには、自己分析が鍵を握ります。自己分析とは、自分の強みと弱みを把握する作業です。
強みを正確に把握すれば、自分の得意なことを活かせる求人が見つかりやすくなります。その一方で弱みを正確に把握すれば、自分が回避すべき求人が明確になります。
最近では、自分の強みと弱みを正確に判定してくれる自己分析ツールがさまざま登場しているので、必要に応じて活用してみてください。
ポイント3.求人情報を細かくチェックする
求人情報に見落としがあると、働き始めてから不満を抱くリスクが高くなります。たとえば、あとからボーナスや退職金が出ないことを知ったとすれば、長期的に会社で働く意欲を失ってしまうでしょう。
自分が納得して働ける環境であるかどうかを把握するために、求人情報は細かくチェックしましょう。
また、求人の文言やPR、待遇などから、隠れた情報を読み取れる場合があります。たとえば、求人情報から下記のような解釈ができます。
- 「若手が活躍できる!」→人の流動性が高い可能性がある
- 「アットホームな社風を全面に出している」→人間関係に面倒が多い可能性がある
- 「資格支援手当がある企業」→研修環境が整っていない場合がある
- 「勤務先が本社でない」→SESの可能性が高い
- 「みなし残業代が大きい」→残業が多い可能性が高い
求人情報を表面的にチェックするだけでなく、隠れた情報も見落とさないようにしましょう。
もし求人情報だけでは判断できないという場合は、直接採用担当者に質問を投げかけてみましょう。面接時に詳しく聞いてみてもいいでしょう。入社してしまったら、「こんなはずじゃなかった」となってしまっても取り返しはつきませんので、面倒でも確認しておきましょう。
ポイント4.転職エージェントを活用する
転職エージェントとは、キャリアコンサルタントが求職者に対して転職のサポートを提供するサービスです。
ヒアリングによって抽出したスキル・経験に応じて、求職者に最適な求人を提案してくれます。企業に直接聞きづらいことも、キャリアコンサルタントを通して情報共有してもらえます。
状況によっては、現在の職場に残るという選択肢を提案するエージェントも珍しくありません。基本的に無料で利用できるサービスなので、転職に失敗したくない方はアドバイスを受けてみるとよいでしょう。
未経験からの転職は今がチャンスな理由
未経験だと、ITエンジニアに転職するのは難しいと思うかもしれません。しかし、未経験からの転職は今がチャンスです。
というのも、IT業界は深刻な人材不足であり、国が人材の創出に力をいれざるを得ない状態になっているからです。
経産省のデータでも、2030年には最大79万人ものIT人材が不足するというレポートが発表されています。2022年5月の日本経済新聞の記事では、IT人材に関する求人倍率は約10倍に急上昇したことが報道されました。
また、レバテックが2022年8月に公開した「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月」ではJavaエンジニア(BtoB)の正社員求人倍率は21.8倍だったと発表しています。
このような情報からも、如何にIT人材が不足しているのかを垣間見ることができます。IT企業の多くが経験者の中途採用に苦戦していることがよく分かります。未経験者は習得するプログラム言語を選択する際にはこのような動向も加味することが大切です。
また、経験者の中途採用が困難なことから採用対象が未経験者層にシフトしており、すでにIT未経験者にプログラミングを習得させて、内定を獲得させるプログラミングスクールも珍しくなくなりました。
このような理由から、未経験者がITエンジニアに転職しやすくなったことは間違いありません。ただし、エンジニアとして転職できるならどこでもいいという考えは危険です。
未経験であっても企業分析は怠らず、入社後の研修環境やOJTの内容などを詳しく把握しておきましょう。
参考:IT人材難、低賃金が拍車 求人倍率10倍(日本経済新聞)
参考:レバテック「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月」
まとめ
エンジニアの転職で失敗しないためには、応募書類や面接対策をする前の求人選びが重要だとご理解いただけたかと思います。
転職活動では、対策をせずに転職先を決めてしまうと、入社してから「こんなはずじゃなかった」と失敗に気がつき、転職を繰り返してしまうケースも少なくありません。
転職回数が多かったり、早期退職をしていたりすると、その後の転職活動で採用担当者から警戒されてしまいます。
転職に失敗してエンジニアとしてのキャリアに傷をつけないためにも、事前準備は綿密に行いましょう。
もし、自分で求人を選ぶのが難しいようであれば、IT業界専門の転職エージェントを頼ってみてください。