「システムエンジニア(SE)は年収が高い」「プログラマーより稼げる」と言われています。 正直、IT業界を知らないと「同じようなものじゃないの?」という気持ちになりますよね。
そこで、システムエンジニアの年収や業務内容をまとめてみました。
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「システムエンジニア」の平均年収は?
厚生労働省が2018年に調査した結果によると、システムエンジニアの平均年収は約550万円です。平均年齢は38.6歳です。2018年末の国税庁データによると給与所得者の平均年収が441万円、平均年齢は46.4歳ですから、平均年収よりは高そうという印象になるかと思います。
ちなみに、同じ厚生労働省のデータで見るとプログラマーの平均年収は約420万円、平均年齢は32.3歳です。実は平均年収にかなりの差がありますね。また、プログラマーの方がシステムエンジニアよりも平均年齢が低いのがわかると思います。
ただ、技術専門職ということで単純な職種全体の平均だけで判断することは難しいため、別の切り口でも算出してみました。
年齢・性別による平均年収
女性の60~64歳はサンプル数が少ないので実態に即しているかどうかは難しいのですが、男性は30代で年収500万に到達、50代前半で約700万になり、女性は50代前半で600万に到達するようです。
女性の方が平均年収は低いですが、性差そのものによる賃金差は少ない職業です。20代に差がないことからも、ライフステージの変化(出産、育児など)で30~40代では責任のある役職に就きづらかったり、正社員雇用が難しかったりというのが原因ではないかと思われます。
企業規模による平均年収
企業規模により、かなり年収の差があることがわかります。ただ、これは「システムエンジニア」の業務範囲や受注形態によるものと予想されます。業務範囲については後述します。
スキルによる平均年収
<スキル標準レベルの説明>
レベル1(新人・初級者レベル/仕事に慣れ始めたレベル)
レベル2(上位者の指導のもとに仕事ができる若手人材レベル)
レベル3(独立して仕事ができる中堅人材レベル)
レベル4(部下を指導できるチームリーダーレベル)
レベル5(社内での指導者・幹部レベル)
レベル6 (国内で著名なレベル)
レベル7(国際的に著名なレベル)
こちらは経済産業省が出したデータになります。レベル6以上になるとシステムエンジニアの枠を超えているとも言えますが、スキルにより年収は明確に変わってくるということがわかります。
都道府県別平均年収
黄色く塗られている県はデータ数が1000件未満のため、信頼性が低くなっていますのでご注意ください。
都道府県による賃金格差は存在していますが、それ以上にIT企業数の差が影響しているように見えます。都市部に企業が集まりやすい傾向はありますが、今後リモートワークが普及することによって多少の変化は起こると思われます。
また、本社が別の都道府県にある会社は、給与体系が本社と同じところもありますので、実際の年収は求人情報から確認してください。
「システムエンジニア」の業務内容は?
色々な観点からシステムエンジニアの年収を見てきましたが、ここで
「そもそもシステムエンジニアってどんな仕事をしているの?」
という話に触れたいと思います。
実は明確な定義はない
「システムエンジニア」という職種に、実は明確な定義はありません。
日本企業においては、主に情報システム開発に携わる中で「上流工程」をメインに担当する人を慣習的に呼ぶことが多いです。
ここで言う「上流工程」とは、受託開発の開発工程における
(1)要件定義
(2)設計
(3)開発(製造)
(4)テスト
(5)納品
の中の、(1)要件定義(2)設計の部分を指します。
(4)テストの一部も上流工程に含まれることがあります。
(3)開発(製造)(4)テストは「下流工程」と呼ばれ、担当する職種は「プログラマー」と呼ばれることが多いです。
ただし、特に小規模の企業では全工程を担当する人を「システムエンジニア」と呼んでいることがあります。一般的には上流工程の方が下流工程よりも年収が高くなる傾向にありますが、小規模企業のシステムエンジニアは下流工程が多いがゆえに平均年収が低くなることが考えられます。
SIerの場合、分類により業務範囲が異なる
ITエンジニアの種類について説明した記事で、開発の仕事は大きく分けると「受託開発」「自社開発」になると書きました。ただ、そこには「システムエンジニア」という職種は出てこなかったと思います。
それは、業務で単純に分けることができないからです。
「システムエンジニア」は主に「受託開発」で使われる職種です。
受託開発をメインで行う会社の中で、コンサルティングから保守までを一括で行う企業のことを「SIer(システムインテグレーター)」と呼びます。同じSIerでも系統によりシステムエンジニアが担当する範囲は大きく異なります。
メーカー系
コンピュータを製造するメーカーが、自分のコンピュータで動くソフトウェアを開発するために作ったのがメーカー系SIerです。
IT企業と想像したときに真っ先に浮かぶのはメーカー系だと思います。
メーカー系のシステムエンジニアは、上流工程の中でも(1)要件定義をメインで行い、以下の工程は他のソフトウェア開発会社へ下請けしているため、下流工程の経験が少ない(プログラミングをしたことがない)システムエンジニアが多いのが特徴です。
ユーザー系
大手企業のシステム部門が分かれて別会社となったのがユーザー系SIerです。
「企業名+システム」というような社名になっていることが多いです。
親会社からの受注をメインにしている場合もあれば、メーカー系のように他社のシステム開発を請け負う場合もあります。その形態によって、システムエンジニアの業務範囲は上流のみか、下流も含まれるか変わってきます。
独立系
どこの子会社でもない、独自の理念で設立されたSIerです。
親会社の後ろ盾が無いため、技術力を重視しているところが多いです。大抵の場合独立系のシステムエンジニアはプログラマーからステップアップするため、状況によっては全工程をシステムエンジニアが担当するケースもあります。
「システムエンジニア」への転職を考えるなら
システムエンジニアに転職する場合、求められる業務スキルは企業ごとに異なります。ただ、共通してあった方が良いことはあります。
プログラミング知識はあった方が良い
まったくの未経験からスタートする場合はプログラマーからのステップアップが一番てっとり早いです。
メーカー系のように、ほとんどプログラミングを行わない場合もありますが、それでも転職の場合はプログラミング知識を持っていた方が歓迎されます。
逆にメーカー系システムエンジニアが独立系に転職しようとした場合、プログラミング経験が無いという理由で、書類選考が通らないケースもあります。
プログラマーと言語による年収については、別記事にて紹介しています。
コミュニケーション能力は必須
コミュニケーション能力といっても、営業トークが必要なわけではありません。
システムエンジニアが主に担当する「上流工程」は
(1)要件定義…システムを作るための機能をお客様に細かくヒアリングする
(2)設計…開発するシステムをプログラマーに理解してもらう
という業務がメインになるため、きちんと「聞き取る」ことや、ヒアリング内容を過不足無くシステム化するためにまとめる能力が必要になります。
持っていると有利な資格
企業によって定義が異なる「システムエンジニア」には、必須となる資格も特にありません。ただ、業務知識の裏付けとして持っているとスキル評価の上で有利になる資格はあります。
国家資格(情報処理技術者試験)
経済産業省が認定する「情報処理技術者試験」は、全般的な知識を持っているという証明になりますので、持っているとスキル評価の上で有利になります。特に官公庁系のシステム開発においては、基本情報技術者以上を持っていないとプロジェクトに参画できないケースもあります。
試験費用は安めですが、年に1、2回しか試験を実施していないため、合格するまでの期間が長くなりがちです。
国際資格(PMPなど)
プロジェクトマネジメントの国際資格である「PMP」や一部のベンダー資格(ソフトウェアなどを販売している会社が行っている認定試験に合格することで得られる資格)は、国際的に通用するものがあります。こちらも持っているとスキル評価は有利になりますが、国家資格と比べ、試験費用や維持費が高額になります。
おわりに
システムエンジニアは、能力が高ければ高いほど年収が高くなる職業です。
ただ、企業によってその業務範囲はまちまちですので、
・自分はどのような業務範囲を望んでいるのか
・ターゲットの企業がどのような業務範囲を望んでいるのか
を見極める必要があるでしょう。
また、未経験から転職したい場合も、経験がある場合も、転職は早ければ早いほど有利です。是非ステップアップし、高収入を目指してください!