毎日のニュースで聞こえているかとは思いますが、新型コロナウイルスの感染者が増えており、第3波が到来しているとも言われています。緊急事態宣言の際は多くの企業がテレワークを導入しているというニュースも流れましたが、現在多くの企業はどう変わっているのでしょうか。
本稿では現在のテレワークの状況や今後の将来の見通しなどをご紹介します。
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テレワークから出社に戻った企業の増加
緊急事態宣言に伴い、外出自粛が求められて新たにテレワークを導入した企業が増えておりました。しかし、外出自粛要請が解除された時点で出社に戻っている企業も少なくありません。HRテクノロジー総研が実施した調査によると5月時点では35.5%が何かしらの形でリモートワークを導入しておりましたが、8月時点では、15%近く減少し23.2%となっています。
テレワークは総務省が取り上げる働き方改革の切り札でもありましたが、なぜ多くの企業が以前の出社スタイルに戻ってしまったのでしょうか。
テレワークから出社に戻った理由とは
多くの企業がテレワークをやめてしまった理由には大きく2点あります。
1点目は、今回のテレワークは、外出自粛要請に応じて緊急で行った施策であり、体制がまだ整備されていない状況での導入だったということです。実際、外出自粛要請内期間内では事前に体制の整備が出来ていた大企業は導入率が高く、逆に整備が出来ていない中小企業では低くなっています。
整備が整っていない状況で形式だけテレワークを導入した企業では、承認のハンコや書類の提出のために出社しなければいけないなど、矛盾した状況が多く起きてしまっていました。また、感染者数に応じて首都圏や大都市圏、地方と順に導入率が低くなっています。地方では、自県には感染者数が少ないから導入する必要がないという判断になった企業も少なくありません。
今回のテレワークの導入は新たな働き方改革のきっかけとなるというものではなく、ただ必要性に迫られたから導入した企業が多いことから、一時的な対応に終わってしまいました。
2点目は、急遽テレワークの導入となったため、メリットを感じなかった企業が多かったことです。実際、テレワークのためのツールまでは用意したものの、書類の処理や評価制度の確立が出来ていない企業が多かったようです。
その結果、自社は電子化出来ていたが取引先は導入していないため出社対応しなければいけない、従来の勤務から変わった際に勤務時間や勤務態度等の評価基準が把握できなくなってしまったため評価をつけられないなどの問題がおきました。
このような問題を受けて、テレワークは「効率が悪い」「自社に向かない」という結論につながった企業も多くあります。Dropbox Japanが実施したテレワークに関する意識・実態調査によれば、経営者から部長クラスの48.9%がメリットを感じていないと答えています。理由としては、紙の書類の確認や処理が進まない、対面で会議をやるからなどがあります。このように管理職が テレワークにメリットを感じず、 実施に積極的でないことがテレワーク離れのもう一つの大きな要因とも考えられます。
ITエンジニアのテレワークの現状
続いてITエンジニアのテレワークの導入状況をご紹介します。5月の外出自粛要請期間内で業種別にみたところ、IT業界が導入率約68%と最も高く、8月の時点でも未だに60%以上の導入を継続している点も含めると、他の業種と比べても圧倒的に高い導入率になっております。なぜITエンジニアではテレワークがここまで導入率が高いのでしょうか。
ITサービスの導入に抵抗がない
多くの企業がオンラインツールやビデオ通話、チャットツール、リモートデスクトップツールなど様々なツールを導入しましたが、急遽の導入となってしまったためどのように使いこなすのか、同僚とどのようにコミュニケーションを取ればいいのかがよくわからないなど、ツール自体の利用に大きなハードルがありました。
しかし、ITエンジニアは通常のプロジェクトで様々なツールを活用してきたことから、このようなツールの導入に抵抗がなく利用できました。その結果、リモートワークの効率が悪いなどの声がある中で大きな問題もなく利用できています。
エンジニアの開発業務はテレワークに向いている
システムエンジニアは設計書作成のためにクライアントとのやり取りなど最低限は必要ですが、プログラマーやWEBエンジニアなどは設計書をベースにプログラミングを行いますし、開発・運用を行なうため個人単位で対応できる業務が他の職種と比べても多いということがあります。
インフラエンジニアなど、サーバーやネットワーク開発に関わる業務の場合は現場に出社する必要があるため、すべての業務ではないですが、基本的にはパソコンとネットワーク(インターネット回線)があればどこでも行なえます。そのため、エンジニアの開発業務はテレワークとの相性が高いと言われています。
ニューノーマルに合わせて変われない企業に未来はあるのか
ご紹介してきたように、多くの企業がまだ昔の仕組みに固執しており、新たな働き方を導入することに抵抗を感じている人が多い結果、テレワークという働き方改革の機会を経ても変革が出来ないでいる企業が多くあります。このような原因は中間管理職からの反対が大きなきっかけでもあり、昔ながらのスタイルに固執する層が一定以上いることが多くです。
しかし、今後テレワークなど新たな働き方が導入されることで、仕事の成果が浮き彫りになっていきます。その結果、従来のようなスタイルで仕組みに合わせることや管理をすることばかりを意識している人材は不要とされてしまうでしょう。
VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性=予測困難な状況)と言われる先が見えない時代において、スピード感が遅く変化できない企業と、新しいスタイルの導入に抵抗がなくスピード感が高く対応できる企業とでは大きな差が広がっていくと考えられます。多くの企業が新しいサービスを導入しながらも、本質的な企業体質は変えられていないケースがほとんどです。
外出自粛要請などでテレワークは試験的に導入されましたが、今後大きな変化につながるにはまだ時間がかかると予想されます。今いる会社はテレワーク前後で仕組みに変化が起きているでしょうか? 今後のキャリアを検討して、少しずつでも変化を始めている企業を探してみてはいかがでしょうか。
<出典>
カオナビHRテクノロジー総研