今までは自社もしくは客先でシステム開発を行うのがエンジニア像として定番でした。これからのニューノーマルの時代においては働き方も多様性が認められつつあり、企業の雇用にも変化がみられてきています。
企業の中には地方創生という政府の掲げるスローガンに従い、またリスク分散の意味もあって都市部から地方へ本社機能を一部移転する動きも見られます。
コロナ禍で東京から人がいなくなっているという噂の真相も気になるところですが、その点も解明しながら、今後のIT企業と働き手となるエンジニアについて考えてみましょう。
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東京の人口減少はコロナ禍の東京離れが原因ではなかったという事実
東京都が公表している人口統計情報を確認してみると、人口の増減について面白いことがわかります。
上のグラフは前月からの増減を日本人と外国人に分けてまとめたものですが、これを見ると減っていたのは東京に住民登録している外国人が中心で、日本人は逆に増加しているということがわかります。
東京都の統計データによれば、1月以降はほぼ毎月外国人の転出が続き、特に4月と7月には7000人以上の転出、5,6,7月と3000人以上の転出が続き、8月や9月には再び6000人以上の転出がありました。
逆に、日本人人口は減少する月もありますが4月・5月の伸びが大きく、トータルで見ると全体的な人口増にあります。東京に日本人人口が増えている、という点についてはもともと予定していた転勤などによる転入もあると考えられますが、地方では就職先が見つからずに東京に出てくるケースもあるでしょう。
上のグラフが東京都の人口総数の推移ですが、年始1月から9月にかけて、全体で見ると増加傾向にあることがわかります。海外からの留学生の受け入れができなくなり、渡航も自由にできない、職業訓練性も受け入れできない状況などもありますが、東京への人の集中は衰えていないというのが実情です。巷で言われている地方創生はまだ一部の動きに留まっていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
地方創生/東京一極集中を避けたい行政と企業の動き
現実的な数値としては東京離れが進んでいる、とは言えない状況にある今ですが、行政の働きかけもあり企業も地方に拠点を移すなどの動きが見られます。
実際にIT関連企業でも、地方在住者をテレワーク勤務で就労させる、地方移住を希望する社員をテレワーク人員とするなどの動きもあります。
動くのは企業だけに留まらず、東京都内でも都市部から郊外へ引っ越しする動きもないわけではなく、郊外型マンションの売れ行きが伸びているというデータもあります。
どうして郊外でも東京近郊に籍を置くのかというと、都市部に近い利便性だけでなくテレワーク中でも時折出社が必要になる懸念や、そもそも企業のテレワークに不定期な出勤が求められる前提があることも考えられるでしょう。
完全テレワークとしてしまうことは企業にとってもメリットになる反面、デメリットもあることですから様々な方向から確認と検証を進めます。現在はまだ、検証を行いながら最終的な形を模索している企業も少なくないでしょう。
コロナ禍で加速する三密への警戒感とテレワークに残る課題
三密にならざるを得ないオフィスでは、コロナ対策をしなければならないけれども対応しようがない状況から休業を余儀なくされたり、急遽テレワークに切り替えざるを得なくなったり、というケースもあります。
オフィス内だけでなく通勤時の電車などでの三密を警戒してテレワークに切り替えたケースもあるようですが、事前に準備を進めていて今回の件で本格的な運用を決めた一部企業では、オフィスを撤廃し完全テレワークに移行したケースもあります。
とはいえ、もともとあったオフィスをなくすというのは簡単なことではありませんし、テレワークに切り替えることで企業が抱える懸念点を拭い去るのも容易ではありません。
完全にテレワークにするというのは、一見テレワークへ簡単に切り替えられると考えられているIT関連企業であっても難しい側面を抱えています。
オフィス面積から人と人との間の距離確保が難しい中小企業などの場合には三密を避けるためにもテレワークは有効ですが、全業務をオンラインに集約するには事前の準備もあるため労力・技術・金銭面でも負担が大きいのも課題です。
今後のIT企業のあり方は?
2015年にはファスナーで知られるYKKが本社機能の一部の社員200人を対象に、東京から富山県に移動しました。さらに今話題になっているのは人材派遣業のパソナが、現在東京で本社機能を担う1800人のうち1200人を淡路島へ、というもの。
ネットだけでなくラジオでも取り上げられていたのでご存知の方も多いかもしれませんが、これにも家庭環境への懸念だけでなく、移住する社員は地域に受け入れられるのか、社員も適応できるのかなど人的課題は次々と考えられます。
中には「地方創生どころか体の良いリストラではないか」という見方もあり、企業としての形を変えるのも一筋縄ではいかないこともうかがえます。
課題の残る完全テレワーク・地方移管ではなく、一部出勤ありという変則的な勤務体系での事業継続を図る企業も出てきているのはそのためでしょう。
また、企業としての在り方は「働き手の意識」に左右される部分も大きく、優秀な社員を雇う・引き留めておくためには従業員が働きたいと思える会社であることが必然的に求められています。
普通通りの出社でも問題ないと思える人材もいれば、基本テレワークでも定期的に出社するなら構わない人材、完全にテレワークに切り替えたい人材もいます。在籍するすべての社員の意思が同じ、ということはあり得ませんから、企業としての在り方が今まで以上に問われる時代になりつつあるのかもしれません。
東京離れが加速する?今後の働き方と雇用の変化
働き手の意識が変われば企業も変わらざるを得ず、働き方の改革も進んでいくことになります。
今までは都市部の企業に勤められるのは都市部に通勤可能な範囲の人材に限られていました。ですが、これからはスキルさえあれば地方にいながら都市部の企業に就職する、ということも可能になります。
都市部に在住のエンジニアからすると就職・転職の競争率もUPしてしまうため純粋にメリットとはいきませんが、地方格差の是正にもつながるのは間違いありません。
事実、同じITエンジニアの平均年収を地域別にみると、地域格差も大きいものがありました。働き方の変化が進んでいけば地元企業が都市部企業へのテレワークに対抗するべく待遇を見直してくれることも考えられ、地方在住エンジニアの待遇も今後是正されていくことも期待できます。
働き方が変われば雇用も変わっていくことになりますから、地元企業のみならず全国的にテレワーク可能な企業に優秀な人材が集まっていくということも考えられます。
働く場所にとらわれない時代に生き残れるエンジニアを目指して
2020年の新型コロナ騒動では、テレワーク可能な業種への転職希望者も増えています。これまで以上にエンジニアとしての転職はハードルが高くなることも懸念される今、これから先の時代も生き残っていけるエンジニアになるということが重要なポイントになるでしょう。
・地方に住んでいても都市部の企業に就職する
・テレワークに限らず自分の働きたい企業で働く
・仲間と連携してシステム開発する楽しさを追求したい
あなたが希望する働き方を実現するために必要なことは何なのか。
テレワークもできる今の時代だからこそ、働き方に多様性が生まれようとしています。 その反面、テレワークが実施されたことで逆に仕事がはかどらない、精神面で休まるところがなくなってしまったなど課題もあります。
自分はどのような働き方をしたいのか、どのような仕事に取り組みたいのかを考えた上で、一度様々な求人を見てみると良いのではないでしょうか。そして、その中で見つけた自分だけのワークスタイルを追ってみるのも良いでしょう。