緊急事態宣言が発令された際に急遽テレワークに切り替えて事業を継続させてきた企業は多数にのぼりました。そして、緊急事態宣言が終息した後は通常通りの出勤に切り替える企業が多数となっています。
異なる環境で生活し、その中に仕事を組み込まざるを得なかったテレワークに関して、「テレワークはこのまま継続してほしい」という意見も多く聞かれます。
皆さんはどのように感じていらっしゃるでしょうか。
新型コロナで職を失った、もしくはその可能性があるから転職したいというだけでなく、
「テレワークを導入しない会社に不信感を抱いてしまったから」
「テレワークを終了して通常勤務に切り替えるという会社に不満がある」
といった理由から”テレワークができる会社に転職したい”と考える転職希望者が市場に増えてきています。一見、この新型コロナウイルスという計り知れない大きな敵を前に「従業員を守る姿勢が見えない会社に不満を抱く」というのは当然のことのようにも思えます。
ですが、本当にそれだけの理由で転職してしまってよいのでしょうか?
みなさんのこれから先の人生を見据えた冷静な判断を下してほしい、その理由と考察ポイントを詳しく解説します。
Contents
新型コロナ禍でのテレワークは管理職以上と従業員では見え方が違う
「本当にテレワークで問題はなかったのか?」
この質問の答えは、「問題はいくつもあった」というのが正解ではないかと考えられます。中でも大きな問題と言わざるを得ないのは、「管理職以上と従業員の間にある認識の相違が大きい」ということでしょう。管理職以上と従業員の間に大きな壁がある、ということになると当然ながら会社に対する愛着も低くなり、企業として弱体化することにつながっていく問題です。
一従業員としてはテレワークをすることで問題はなかったと感じていても、テレワークを終了した企業では、企業全体で見たときにテレワークに問題がある、もしくはこのままテレワークを継続すると企業としての成長に差し支える、という懸念を管理職以上の職種が持っていることは認識しておくべき事案でしょう。
管理職300人・部下300人に対し、キャリコネで実施されたテレワークに関するアンケート結果を見てみましょう。
<管理職300人>テレワーク中に感じていた不安についてのアンケート結果
1位:「部下の業務推進(業務実施状況)」(50.0%)
2位:「部下とのコミュニケーション」(49.3%)
3位:「他部署との連携」(47.3%)
4位:「取引先との連携」(46.3%)
<部下300人>テレワーク中に感じていた不安についてのアンケート結果
1位:「同僚との連携」(51.0%)
2位:「自身の業務推進」(48.0%)
3位:「会社の将来」(47.7%)
4位:「自身の評価」(43.3%)
どちらの場合にも人との関わり方、とりわけ上司となる立場では部下のマネジメントが十分にできなくなる点を課題としています。部下のマネジメントが十分に行われないということは、人事評価も十分にできるとは言い難い状況であるということにも注意が必要です。
新型コロナ禍でテレワークをおこなった結果見えてきたデメリットについて
出勤がなくなり、「新型コロナウイルスに感染してしまうかもしれない」という不安を感じながら通勤するストレスが解消したのと同時に「ずっと家にいるのでオンオフの切り替えが難しい」「日常の中でしていた帰宅途中の寄り道や買い物・飲食などのストレス発散ができなくなってしまった」などのデメリットを痛感している方もいらっしゃることでしょう。
WOOCが公表したコロナ禍のテレワークアンケート調査報告を見てみると、『自宅で仕事をすることの難しさ』は多くの方が実感している問題でもありました。
その他にも、テレワークのデメリットはいくつか話題として取り上げられてきていますので調査結果をまとめてみます。これらのデメリットを見てもなお、あなたにとってテレワークは価値のあるものなのかどうか冷静に判断してみてください。
デメリット1:家にこもることでストレスになるなどメンタル的にダメージを受けがち
通勤の必要がなくなったため家にこもってしまうことが多くなり、特に単身世帯の方の中には「人と全く会話をしなくなった」ということもニュースなどで取り上げられていました。実際に一人で黙々と家からほとんど出ることもなく仕事をしていることで、精神的に不安定になってしまった例もあります。
デメリット2:育児や介護と同時進行することでかえって生産性が落ちたケースもある
家で仕事をすることができれば育児中・介護中でも仕事ができる、というのはすべての人に当てはまるものではありません。家に小さい子供がいて仕事が捗らず、子供が寝た夜間に作業をすることになって睡眠時間が減ってしまったというケースもあるのです。
睡眠時間に言及せずとも、集中したくてもできない環境では生産性が落ちることは言うまでもないでしょう。
デメリット3:会社からの評価が正当に受けられる安心感がない
管理職もマネジメントが十分でないと懸念しているように、人事評価が今まで通り正当に行われるか不安だというのは当然の流れでしょう。
実際、働いている姿を見ることができなくなることで今まで通りの評価システムは公平性を保てなくなります。
デメリット4:既存顧客との関係性の薄弱化・新規顧客の獲得が難しい
これは企業側へのデメリットだけでなく、案件が減っている今「新規顧客との信頼関係を築いて案件を取り付けたい」と考える方は、その難しさが実感としてあるのではないでしょうか。
働く側としても、全く新しいつながりを生み出すためにはテレワークだけでは乗り切るのが難しいもの。既存顧客との間にあった関係性が薄まったという実感もあるかもしれませんが、新規顧客となるとより一層実感があるのではないでしょうか。
デメリット5:他のメンバーとのつながりが弱くなりチームワークが劣化した
仕事をする、というのは個人で開業しているのでもなければ人とのつながり・連携は作業効率に大きく影響する部分です。
このデメリットは従業員にとっては「スムーズに仕事ができない」だけでなく「働きにくい環境」にし、企業にとっては大きな打撃につながっていくものにほかなりません。
テレワークのため評価制度が成果主義になると年収ダウンもありうる
テレワークをメインとする場合、企業側が従業員を評価する際は”成果主義”に偏らざるを得ません。これについてしっかりと考察していくと、”モチベーション低下”や”企業の業績悪化”にもつながりかねないのです。
効率低下を実感している場合、評価だけでなく年収ダウンにもつながる可能性も低くありません。さらに成果主義が進んで雇用も変化し、ジョブ型雇用が起用されることがあれば”職(生活)の安定”をも揺るがしかねない問題にもなります。
本格的に会社がテレワーク主体になると年収が下がる人・上がる人の条件
テレワークを本格的に企業が導入する場合、評価制度の見直しが大きな課題となっています。出社する場合には成果物だけでなく、仕事に向かう姿勢や努力も評価項目とされてきましたが、テレワークでは同じように評価することは難しくなります。
ではどこを見て評価するのでしょうか?
テレワーク主体となると、アウトプット(成果物)を評価とすることに比重が大きく傾くことになるのは致し方ありません。それだけではなく、どうやったら作業を効率よく進められるのか、今以上に生産性を上げられる人材やその仕組みを考え実施することができる実現力も評価基準として大きな意味を持つことになります。
以下にテレワーク主体になった時、評価が下がる人・上がる人の条件をいくつかピックアップしましたので参考にしてみてください。
【テレワーク主体で評価が下がる人の条件】
・勤勉だが作業効率が悪い
・成果ではなく努力・姿勢を買われて出世(年収UP)を実現してきた
・作業スピードが遅い
【テレワーク主体で評価が上がる人の条件】
・作業効率が高い
・効率よく仕事を進めることに積極的(アウトプットが増えるから)
これだけを見ると当たり前と思われるかもしれませんので、具体例として「あれ…これはちょっと…」と感じられるかもしれないシーンを1つ挙げてみます。
「(出勤中は)作業を効率的に簡単にすることに注力していて自分でマクロを組むなど自動化する手法を生み出すことにいそしむが、周囲と共有するのではなくあくまで自分の時間を空けるために行う、言ってしまうと非協力的な人材」の評価が上がり、
「困っている人をサポートするのに積極的な分、自分の作業ペースが落ちてしまうこともある。または作業を丁寧に進めすぎるあまり作業効率が低くなる人材」の評価が下がる可能性が高くなります。
こう見ると自分にとって”分が悪い”と感じられたり、”チームワークを乱す人材の評価が上がり、協力的な人材の評価が下がるのは遺憾だ”感じたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか?
求めるべきは”よりよい環境”であり”テレワーク可能な職場”ではない
先の部分ではテレワークのデメリットについてまとめてきましたが、もちろんテレワークにはメリットもあります。働く側が感じている”テレワークを続けたい理由”からそのメリットを読み解いてみました。
・通勤ストレスがない
・通勤時間が減った分、プライベートに時間を使えるようになった
・(家で集中できる環境があれば)集中して作業を進めることができる
・人間関係のわずらわしさから解放される
・新型コロナウイルスに感染するかもしれない不安から逃れられる
先に挙げたデメリットをみても「テレワークは自分にとって全くデメリットにはならない!」と言い切れる場合にはテレワークできる環境に身を置くのもよいでしょう。
ただ、「デメリットがないとは言い切れない」と感じた場合には一歩踏みとどまり、もう一度考えてみることをおすすめします。ワークライフバランスをより良いものにしたいと求めることは健全な思考です。ですが、それだけのためにテレワークができる企業への転職を考えるというのはいかがなものか、ということがお分かりいただけたでしょうか。
「業務がスムーズにいかない」「ほかのメンバーとのコミュニケーションが減少しチームワークが低下している」などの実感があるなら、それは会社の業績悪化につながり、結果として自分の職の安定を揺るがしかねない問題として認識しておくべきなのかもしれません。
テレワークができる会社=良い会社ではありません。
今後のキャリア形成のために今必要なのは何か冷静に見つめ、より良い環境に身を置く。それができる会社があなたにとって大切なのではないでしょうか。