IPAは、2023年4月より実施される基本情報技術者試験の内容を大幅に変更することを発表しました。2020年にも改訂がありましたが、今回は改革と呼べるほどの変更があります。
具体的には、試験が通年化されるとともに、出題範囲も大きく変わります。これまでの勉強方法では通用しなくなりそうです。
ITエンジニアの登竜門とも言われている基本情報技術者試験は、現在もITエンジニアの多くが受験している国家資格です。
これからプログラマーを目指している人にとっては、今回の改革は見過ごせない変化であり、不安も感じるでしょう。
この記事では、基本情報技術者試験の変更点や新しい出題範囲、メリットの変化などを解説します。
これから受験を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
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Contents
基本情報技術者試験とは?
基本情報技術者試験は、経済産業省が情報処理技術者としての知識・技能が一定以上の水準であることを認定する国家試験です。
ITエンジニアの登竜門と呼ばれており、技術者としての土台となるITスキルの基礎を学べます。合格すれば、上位者の指導をもとに下記の業務を遂行できる実力を示せます。
- ITを活用した戦略を立案できる
- システムの企画や要件定義に参加できる
- 利用者に価値の高いシステムを構築できる
- サービスの安定的な運用の実現に貢献できる
IT企業で活躍できる可能性を広げてくれる資格であり、ITエンジニアを目指す場合に検討されることが多くなっています。
また、これまでの基本情報技術者試験について、更に詳しく知りたい場合は「基本情報技術者試験の合格に必要な勉強時間は? おすすめの勉強方法や注意点などを解説!」をご覧ください。
2023年4月からの基本情報技術者試験の主な変更点
基本情報技術者試験は、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、2020年12月からCBT(Computer Based Testing)方式で試験が開始されていました。
その後、さらに利便性を高めるために、通年試験化に向けて実施方式や採点方式、試験時間、出題範囲などまで変更することになりました。最終的に2023年4月から新体制に変わることになっています。
引き続き、基本情報技術者試験の主な変更点をまとめてみます。
変更点1.年2回から通年試験になる
基本情報技術者試験は今まで、1年間に上期・下期の2回に分けて試験を実施していました。しかし、今後は通年試験として実施することで、受験者が都合のよい日時に受験できるようになります。年間の受験回数を増やせるので、試験に落ちてしまったときのリスクが減り、再チャレンジしやすくなります。
変更点2.採点方式がIRT方式に変わる
新体制では、採点方式がIRT方式に変更されます。IRTはItem Response Theoryの略であり、項目応答理論のことです。運や問題の難易度による実力判定の難しさをもたらす要素を排除する仕組みとして知られています。したがって、異なる試験を受けた受験者間で不公平が発生しにくくなることが期待できます。
変更点3.試験形式が大きく変わる
新体制では試験時間や出題数などの試験形式も大きく変更されます。これまでは午後試験(小問)と午後試験(大問)に分かれていましたが、今後は科目A試験(小問)と科目B試験(小問)に分かれます。これまでと比較して試験時間は約30~40%に短縮されるとのことです。試験を受験するときの負担も減るでしょう。
変更点4.試験要綱の改訂により試験範囲が変更される
基本情報技術者試験の試験範囲は、「情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱」に掲載されています。2023年4月の試験から適用されるVer.5.0では、科目B試験の試験範囲が大幅に変更されました。これまで対象だった範囲が対象外となっていることから、不要な部分を学習しないように事前確認が不可欠です。
参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱(IPA)
基本情報技術者試験の新しい出題範囲
引き続き、基本情報技術者試験の新しい出題範囲について詳細をまとめます。
科目A試験の出題範囲
科目A試験は現在の午前試験に準じるため、特に変更点はありません。
科目B試験の出題範囲
科目B試験の出題範囲は下記の通りです。
プログラミング全般に関すること | ・実装するプログラムの要求仕様(入出力、処理、データ構造,アルゴリズムほか)の把握 ・使用するプログラム言語の仕様に基づくプログラムの実装 ・既存のプログラムの解読及び変更、処理の流れや変数の変化の想定 ・プログラムのテスト、処理の誤りの特定(デバッグ)及び修正方法の検討など |
プログラムの処理の基本要素に関すること | 型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、論理演算、選択処理、繰返し処理、手続・関 数の呼出しなど |
データ構造及びアルゴリズムに関すること | 再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理など |
プログラミングの諸分野への適用に関すること | 数理・データサイエンス・AIなどの分野を題材としたプログラムなど |
情報セキュリティの確保に関すること | ・情報セキュリティ要求事項の提示(物理的及び環境的セキュリティ、技術的及び運用のセキュリティ) ・マルウェアからの保護、バックアップ、ログ取得及び監視 ・情報の転送における情報セキュリティの維持、脆弱性管理、利用者アクセスの管理、運用状況の点検など |
ソフトウェアという記述の代わりに、プログラミングという記述が追加されました。IT全般ではなく、プログラミングに関する出題がメインとなっています。
ネットワークやデータベース、マネジメント、ストラテジ、C、Javaなどの記述も削除されており、試験範囲から外れました。
詳細を知りたい方は試験要綱をチェックしてみてください。以前の試験範囲から削除された部分が青字、追加された部分が赤字で記載されています。
参考:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱(IPA)
基本情報技術者試験のルール変更に関する気になるQ&A
基本情報技術者試験のルール変更にあたって、さまざまな疑問が生じている方も多いでしょう。ここからはルール変更に関する気になる疑問にQ&A形式で回答していきます。
Q1.これまでの参考書は使えるのか?
A1.新しい参考書に買い替えたほうが無難です。
科目B試験の内容が大幅に変更されており、旧体制にもとづく参考書だと試験範囲外を学習してしまうリスクが高まります。
また、各種プログラミング言語が試験範囲から外れるため、どの言語にも共通するアルゴリズムを深く学べる書籍が重要になってくるでしょう。
いずれにせよ、新体制にもとづく新しい参考書を利用したほうが無難です。
Q2.難易度も変わるのか?
A2.選択問題がなくなったので、得意分野を活かしづらくなりました。
これまでの試験では午後試験に選択問題があったので、苦手分野があっても得意分野の問題を選べました。たとえば、C言語が得意な人はC言語の問題を選択でき、各種プログラミング言語がわからなければ表計算ソフトの問題を選択するなどして合格できました。
しかし、新体制における科目B試験では選択問題がありません。つまり、得意分野があれば試験に合格しやすくなるとは限らないということです。
得意分野を活かしづらくなった点では、難易度が高くなったといえるでしょう。
Q3.受験するメリットも変わる?
A3.これまでの試験よりも開発スキルを証明しやすくなる可能性が高いです。
試験要綱では、新体制の対象者像が下記の通り変更されています。
変更前 | 高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者 |
変更後 | ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者 |
新体制では、ITサービス、製品、システム、ソフトウェアを開発できる人材の育成を目的としていることがわかります。合格すれば開発に必要なプログラミングスキルを証明しやすくなるでしょう。
引用:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要綱(IPA)
まとめ
基本情報技術者試験が、通年試験化になったり出題範囲が変わったりするなどをご紹介いたしました。2023年4月からの変更点についてご理解いただけたかと思います。
特に新体制では、特に科目B試験の出題範囲に大きな変更点がありました。
科目B試験では、C言語やJAVAといった個別プログラム言語による出題が廃止され、より普遍的かつ本質的なプログラミング的思考力を問う問題が出題されます。最新の言語を柔軟に使いこなせる人材の育成を目指しているのでしょう。
ソフトウェアという表現も削除され、ネットワークやデータベース、マネジメント、ストラテジなどの範囲も対象外となりました。開発に必要なプログラミングスキルを重視していることが読み取れます。
今後の基本情報技術者試験は、プログラミングスキルを証明しやすい資格になっていくのだと推測できます。これからITエンジニアを目指す方は、改めて変更点を見直して受験の必要性を検討してみてください。