ITエンジニアの転職は、現在のところかなりしやすいと言われています。
経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2019年以降は供給人材が減少する傾向に転じるため、更に人材が不足するだろうと予測されています。
しかし、誰でもいいから採用したい、というわけではありません。
上記調査でITベンダーに行った「不足人材に対する課題」では
「中途採用で良い人材を採用したいが、求める人材が採用できない」
と答えた企業が39.9%にのぼりました。転職活動で、企業に「求める人材」と思ってもらえることが転職を成功させるカギだと言えるでしょう。
でも、どうすれば「求める人材」と思ってもらえるのでしょうか。
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退職したい理由は何?
転職を希望するということは、それまでいた会社を退職したい(もしくは、した)ということです。現在の待遇を捨てて、新しい環境にチャレンジするというのはパワーがいることなので、退職したい理由は当然あると思います。
まずは「本音」ベースで退職理由を思い返してみましょう。その理由によって、自分が転職したい会社の方向性が見えてきます。
「前職はITエンジニアではなかった」という人も当てはまる部分があると思いますので、考えてみてください。
以下に、厚生労働省が毎年調査している「平成30年上半期雇用動向調査結果の概要」で男女ともに上位の退職理由3つを挙げますので、それぞれがターゲットとするべき企業を見ていきましょう。
「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」
自分で業務量をコントロールできず、残業が常に多い状態だと、何かやりたいことがあってもできませんし、健康管理の面でも心配です。
2020年4月からは働き方改革推進関連法により、中小企業でも時間外労働の罰則付き上限規制が課せられます。(大企業では2019年4月施行済み)
これにより長期的に長時間残業することは法律上できなくなりますが、急に残業がまったくなくなるということはあまり期待できないでしょう。
また、年間休日が少ないというのは自分でどうすることもできないので、転職理由としては大きいと思います。
<”年間休日○日以上、残業月平均○時間”で企業を探す>
年間休日は求人票に必ず書いてあるものなので、指標としてはわかりやすいです。企業がアピールしやすいポイントでもあります。
社員の残業月平均を出している企業は、社員の労働実態を把握し、残業時間を減らす努力をしていると言えます。特に大企業は既に時間外労働の上限規制をされているので、残業時間には敏感です。
「大企業」というと「大手企業」をイメージすると思いますが、法律上は「中小企業基本法」に定められた中小企業の条件を満たしていない企業のことを指しており、業種によって基準が違います。
IT業界ですと「資本金が5000万円を超えている」「社員数が100人を超えている」という条件を両方満たすと「大企業」です。探してみると意外な会社が大企業なことがありますよ。
「給与等収入が少なかった」
2017年に経済産業省が発表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、ITエンジニア個人に対する質問への回答で
・45%が給与決定に「年功序列」が大きく関わっていると思っている
・67%が給与決定において能力や成果が年功より重視されるべきと考えている
ということがわかりました。
自分の能力に応じた給与や待遇が与えられていないと不満に思う人は、必然的に多くなります。
<“年功序列要素が少ない”企業を狙う>
「実力主義」を打ち出している、社長が比較的若い、新しいことをどんどんやりたいと考えている、というような企業であれば、実力相応の給与がもらえる可能性が高いです。
逆に、年功序列が強い企業は古くからの社員が多く「○歳の人にこれ以上の給与を出すと既存社員が不満に感じてしまう」というジレンマに悩まされています。中途採用の給与の面での交渉で、さしたる理由もなく値切ってくるのはこういう企業です。給与は高くない代わり、下限もそこまで低くないのが特徴です。
「職場の人間関係が好ましくなかった」
「若年層は会社よりもプライベートを重視する」と言われていますが、公益財団法人 日本生産性本部の調査によると、2019年入社新入社員の92.5%が「仕事を通じて人間関係を広げていきたい」と回答しています。それだけ職場の人間関係は重要ととらえているのは、どの世代も同じと思われます。
「人間関係が良ければ残業があっても平気だけど、人間関係が悪いと定時に帰れても耐えられない」
というITエンジニアの声を聴いたことがあります。
一日のかなりの時間を一緒に過ごすメンバーとの関係というのはとても重要です。相性が悪いことはどうしてもあるので、関係によっては仕事が嫌になってしまうこともあるでしょう。
ただ、一度考えてほしいのは
・現在のチームだけ嫌なのか、それとも会社全体の雰囲気が合わないのか
ということです。
チームが嫌、ということであれば、会社の人事担当者に相談してみるという手があります。他のチームであれば良い関係が築けるのであれば、いきなり退職という手段を取らなくても、快適な環境を手に入れられるかもしれません。
ただ、会社全体の雰囲気と合わないと感じている場合は、仮に他のチームに行けても同じように人間関係が悪くなる可能性が高いです。
<気になる企業を徹底研究>
人間関係が合うか合わないか、それは自分にしか判断できません。
休日に会社のイベントに参加するのが楽しみという人もいれば嫌で仕方ない人もいるでしょう。誰かの指標では測れないものなのです。
自分が特に「これがあると耐えられないもの」を考え、意識することにより、ホームページや求人票、面接などである程度判断がつくかもしれません。
ただし、面接で会う人が同じチームの人とは限らないということは覚えておいてください。
次に考えるべきこと
退職理由を思い返し、ターゲットとなる企業をイメージしたら、次に考えるべきことがあります。
「ターゲットの企業に『求める人材』と思ってもらうためにはどうすればいいか」
です。こちらが入社を望んでも、相手の企業に「この人を採用したい」と思わせなければ転職は成功しません。
転職して、何がしたいのか
転職して、前職の退職理由を解消できればいい。というのは自分の都合です。
解消するために、相応の待遇を得るために自分ができることは何か?
と考えないと、企業にアピールすることは難しいです。
<休日が多い、残業が少ない=業務効率を重視している>
出社日が少ない、残業が少ないということは、定時時間内に一定の成果を出さなければいけないということです。
特に残業が多かった人は、目の前の仕事を片付けることに必死で「この業務はどうしたらもっと早く終わるだろう?」と考えることから遠ざかっている傾向があります。転職しても同じやり方をしていては「業務効率を軽視している」と思われる恐れがあります。
自分がやってきた業務を振り返り「他人事」として第三者目線で見直してみると、効率よく業務を進めるためのポイントが見つかるかもしれません。
「このように業務を効率化して御社に貢献できます」
というアピールができると効果的です。
前職で「業務を効率化したら、仕事を増やされた」ということであれば、その実績がそのままアピールポイントになるでしょう。
<実力相応の給与=成果が無ければ給与は下がる>
年功序列を重要視していない企業は、どれだけキャリアがあっても相応の成果を出さなければ望む給与をもらうことができません。
これは「前職で評価されていたやり方が通用しない」というケースもあり得るということです。
自分のスキルを客観的に見直し、対象企業の「求める人材」と合致している部分があるかどうかを確認しましょう。
足りない部分に気づいたら、独学でも勉強するとアピールになります。
<人間関係を良い状態でキープするためには>
どんなに良い人間関係の企業に転職できたとしても、何らかの理由で人間関係が悪くなることは考えられます。
嫌な思いをしないに越したことはないので、人間関係が悪くなった原因をわかる範囲で振り返り、自分に原因がありそうな部分を理解しておくことが重要です。
また、スキルのミスマッチは人間関係悪化の原因になるので、自分のスキルを活かせると思うところにアピールするのが良いでしょう。
<共通して必要なこと>
退職理由がどのようなものであっても、
・前職での業務や環境を第三者的に見てみる
・スキルアップのために勉強する
ということが必要だと思っていいでしょう。
また、どんなにネガティブな退職理由であったとしても、企業にアプローチする際には「前向きな志望理由」を考えましょう。
逆に退職理由をポジティブに飾る必要はありません。「退職理由」と「志望理由」は別だからです。
だからといって、個人攻撃や、勤労意欲が乏しいと誤解されるような言い方は避けた方が無難です。
「残業が多いのが嫌で辞めた」なら「こなさなければいけない業務が多く、思うようにスキルアップの時間が取れなかったため転職を考えた」くらいの言い回しが良いでしょう。
転職は若ければ若いほどいい?
「転職するなら若い方がいい」
転職を意識したとき、一度は言われる言葉だと思います。ことITエンジニアにとっては、ある意味事実です。
理由は
「年齢が上がるほど、求める役割が変化する」
からです。
20代のうちは、経験が少なくても「新しいことにチャレンジしたい」という意欲を見せればポテンシャル採用されることが可能です。
しかし、30代になると求められるのは「即戦力」「マネジメント能力」です。基本的に成長を待ってくれることは無いと思ってください。小規模でもマネジメントの実績アピールが無いと、書類選考が通らない企業もあります。
また、「自分ができることは何か」のアピールに「将来自分がどうなりたいか」というキャリアプランも求められます。つまり、30代以降のキャリアを見据えて、20代のうちからマネジメントすることを意識し、10年後、20年後にどうなっていたいかということを考えておく必要があるのです。
これは転職しないで今の仕事を続ける場合も同様です。
おわりに
転職先がすぐに決まる人と、なかなか決まらない人がいると思います。
ITエンジニアが転職活動に失敗しないためには
・自分が求める企業像を明確にする
・企業に「求める人材」と思ってもらえるよう、的確にスキルをアピールする
・「将来自分がどんなエンジニアになりたいか」を考えておく
ということが必要です。
逆に、これがスムーズにできる人は、日頃から自分のスキルや将来像を意識しながら仕事をしているということです。
また、これは新卒や未経験でも言えることですが、企業から不採用になるのは、
「能力が足りなかったから」
ではなく、
「会社が求める人材としてのアピールが足りなかったから」
ということです。
必要以上に卑下せず、自分に合う企業を探しながら、適切にアピールする方法を考えることで、転職成功への一歩が踏み出せるはずです。