以前は地方在住の方がエンジニアを目指す場合、プログラミングの勉強を始めるため、スクールがある場所まで通わなくてはいけないといった問題がありました。
それだけでなく地方ではITエンジニア向けの求人も少ないこともあり、地場の企業への転職は難しいというような壁にあたってしまう方も多かったのではないでしょうか。
しかし、働き方改革やコロナ禍などの影響によりIT企業の働き方は他の業種と比較しても大きく変わりました。
リモートワークを働き方のニューノーマルとしている企業も増え、オフィス自体の役割も変わり、分散化または縮小化しフルリモートを基本とする企業も多く出てきています。
また、UターンやIターンというように都心から地方へ移住し、フルリモートで東京の企業へ転職という働き方も増えてきています。
これらの事情を踏まえると、地方に住んでいたとしてもエンジニアへの転職ということも可能とするチャンスが広がっているようにも思えます。
地方在住の未経験エンジニア志望の方にとっては『チャンスが増えてきている』ことは間違いありません。
とはいえ、未経験からの転職が容易な業種ではないこともありますから、ここでは具体的に地方在住の未経験のエンジニア志望の方がどのように転職を考えればいいのかについて解説させていただきます。
Contents
なぜこれまで地方在住未経験エンジニア志望者の転職が難しかったのか?
これまで地方在住者の未経験からのエンジニア転職が難しかった事には様々な背景があります。
- 地方IT企業の人材が少なく未経験者を教育できる余裕のある企業が少ない
- 地方ではIT企業が成長できるだけの十分な案件そのものが少なかった
- プログラミングスキルを習得するスクールが都心などと比べて少ない・内容が足りていない等の問題があったこと
これらの事情は未経験からの転職が難しいことの背景だけでなく、同じITエンジニアであっても地方では都心部ほどの収入にはならなかったということにも関係します。
求人情報の特徴や違い
地方と都心でどのような違いがあるのか、についても簡単に把握しておきましょう。
<都心(東京など)の場合>
- 大手IT企業も多く所在しており、下請けの企業まで十分な案件が確保できる環境
- 地方と比較して収入も得られることで優秀な人材が集まりやすい
- 人材が集まりやすいことで未経験者の教育まで人手が回るため積極的に未経験者を確保する
<地方都市の場合>
- IT企業数も案件数も都心部と比較すると少ない
- それほど高収入とはいかないことから人材が集まりにくい
- 未経験者の教育に力を入れるほどの余力がない場合が多い
上記のような違いから、求人数にも差がでる、未経験者を雇い入れる余裕の有無にも違いが出ているといえるでしょう。
働き方改革・コロナ禍のニューノーマルで現在の環境はどのように変化したか
今までは会社に属して、そこで自社開発もしくは案件を請け負った通える範囲の企業に出向いて仕事をすることが当たり前でした。
ですが働き方改革や昨今のコロナ禍の影響により、他業種よりも「リモートワーク」が当たり前になりつつあるのが今のIT業界。
本社を縮小してテレワークをより快適なものにし、企業利益をあげるための投資に回す会社も増えています。
都心部の企業でも、「リモートワークで請け負える案件が増えたから既に雇っていた社員も含めて、どこに住んでいても仕事ができる環境なら良い」という考え方が広まっています。
優秀な人材は都心だけにいるわけではない、という思考はコロナ禍の影響でより色濃くなったようにも感じられ、中途採用面談も実際に顔をあわせることもなくリモートで決定し働き始めるということも多くなりました。
フルリモートワークという選択肢が増えたことにより、エンジニア経験者は都心に住居を構える必要がなくなり、Uターン、Iターン、Jターンという形で地方に住みながら、勤め先は変えずに働くという方式を選ぶ人も増えました。
その背景には都心の生活費の高さ、人の密度、生活環境などによるストレスから開放されたいという欲求もあるようです。
最大の利点は地方在住でありながら、給与水準は都心(東京)と変わらず年収を得られるということでしょう。
地方在住エンジニアが考えられる働き方とは
これまでは無理だろうと思われていたような働き方・転職が可能になった今、地方在住のエンジニアの働き方も幅が広がっています。
- 地方(地元)企業へ転職する
- 東京の企業へ転職しフルリモートで働く
- 首都圏に引っ越し東京で働く
IT企業は都心だけではありませんから、当然地方にある企業で転職を希望したいと思える企業があればそちらへの転職も可能でしょう。
とはいえ、未経験からは地方IT企業の受け皿がまだまだ不足気味であることを考えると、条件面なども含めて強くお勧めできるものではありません。
実際筆者の回りでも、業界未経験から都心のIT企業へ転職し、地方在住のままフルリモートでITエンジニアとして働く事例もいくつもあります。
未経験者の受け皿が大きい都心部や首都圏のIT企業へ未経験エンジニア志望者が転職し、フルリモートで働くことは十分現実的な選択肢となってきています。
また時折出勤がある場合等は通勤手当を拡充させている企業もあり、新幹線を使う距離からの出勤費用も会社負担でOKとしている企業も増えてきました。
どこに住んでいても希望する企業で働ける、ということが他の業種よりも早く「ニューノーマル」となりつつあるIT業界だからこそ、ご自身で可能性を縮めてしまうことなくご自身の最良の選択肢をつかむことに躊躇しないでいただきたい、ということをお伝えさせていただきます。
未経験からエンジニアへの転職は可能か?
未経験からエンジニアへの転職は可能か、という問いの結論は「十分可能」と言えます。
ただしそれには、ご自身で事前にある程度実務をこなせるようなプログラミングスキルを習得しておく、企業に対して有効なアピールができること、また十分な情報収集能力(未経験で希望が叶えられる求人を入手するための)が不可欠となります。
未経験でありながら「実務をある程度こなせるプログラミングスキルはどの程度のものか」を把握することは簡単とはいえません。
ですがその点も含め、あらゆる業界の転職・就職活動でも同じですが「自分を採用することで企業が得られるメリット」を伝えられるだけのアピールができる材料を揃えることは重要です。
今は書籍やスクールだけでなく、ネット上でプログラミングスキルを習得するための情報収集や講座を受講するなども可能な時代となりました。
ご自身にあった方法でしっかり準備をし、転職希望の企業にとって自分を売り込めるだけの地盤を整えることは最重要課題と認識しておいてください。
地方在住で未経験からエンジニアになるための障壁
未経験から地方在住のままエンジニアを目指す際の障壁となりうる要因には以下のようなものが挙げられます。
- プログラミングの学習がしにくい
- 地方都市の未経験可のエンジニア求人が少ない
- 家庭環境などの問題から地方から離れることができない
都市部などでは対面でプログラミングを学べるスクールも多く開催されていますが、地方ではその数もかなり限られており、住環境によっては通えないということもあるでしょう。
また地方では先にお伝えしたように、未経験者を育成するだけの余力がないことで「未経験可」の求人が少ないということも、未経験の地方在住者がエンジニアを目指しにくい環境となってしまっています。
持ち家で離れられないなどの状況から、地方を離れ引越しをすることも現実的ではない場合もあるでしょう。
このような障壁をクリアするための後ろ盾となるものが、今のIT業界でニューノーマルとなりつつあるテレワークという働き方。
未経験で会社にも近くない、ということで簡単に受け入れられるとまではいきませんが、企業によっては受け皿を拡大してエンジニアを育成しているケースもあります。
そうした企業に受け入れられるために欠かせないのが、プログラミングスキルを習得した上で、実務経験はないがエンジニアとしてやっていける地盤を整えることに他ならないのです。
障壁をクリアする方法はある
ではどうやって地方在住者が都心部などの企業にエンジニアとして未経験からスタートするため、障壁を乗り越えるかについて見ていきましょう。
先の障壁を乗り越える貯めにはまず、「ご自身が実務未経験であってもプログラミングを積極的に習得し努力し、それをプラスの要因として見てもらえるものにするか」ということが必須です。
そのうえで、しっかりと情報を収集しご自身にあった転職先の求人情報を手に入れること。
そのためにできることは大きく、以下の3つの要素が挙げられます。
- オンラインスクールや学習サイトを活用する
- 転職サイトや転職エージェントを利用する
- リモートワークが可能な企業を中心に求人をさがす
今は様々なサービスもネット上で完結できる時代です。
プログラミングを自力で書籍やネット上の情報だけで収集してもある程度は習得できますが、より実践に近い形で学ぶためには開発環境もある程度整えることも必要。
環境を自力で整えることは容易ではない部分もありますが、そうしたところをサポートしつつスキルアップを目指せるオンラインスクールも増えてきていますから、積極的に活用すると良いでしょう。
開発環境も利用できるオンラインスクールや学習サイトを活用することで、より実務に活かせるスキルを身に着けることができますのでおすすめです。
ただし、注意が必要なのは、エンジニアへのジョブチェンジを考えている未経験者が急増していることもあり、スクールやオンライン学習サイトは乱立している状況になっています。そのため、受講生を獲得するため、過激なキャッチコピーなどで勧誘しているサイトも増えています。
大切なのは、自身のキャリアパスを見極め、適したスクール、オンライン学習サイトを選定することです。情報収取を念入りにして、最適な学習方法を見つけてください。
スキルを身に着けつつもう一つすべきこととして、「求人情報をキャッチすべくアンテナを張っておく」ということ。
これにはいくつか方法がありますが、上で挙げたように転職サイトに登録して情報が届くようにしておくこと、また転職エージェントに登録して情報を受け取ることもおすすめです。
エージェント企業には独自の情報網もありますから、一般的に公開されていない非公開求人や、公開前の情報を受け取ることもできるのです。
先にもお伝えしたように都心部などではフルリモートを積極的に行っている企業も増えていますから、そうした企業の情報をしっかりキャッチできる体制も整えておきましょう。
地方在住未経験志望者がITエンジニアになれた場合のメリット
容易ではない未経験からの地方在住者がエンジニアになる、という目標を叶えることにはこのようなメリットがあります。
- 給与水準があがる(都心の企業なら特に大きくあがる)
- 経験を積めば転職、独立などの選択肢が大きく増える
- 将来的にも伸びることが約束されている業界に身を置ける
まだまだ地方格差がある今、やはり安定して案件を受注していたり、規模の大きい案件を抱えている企業が多い都心部では、地方よりもエンジニアに還元される収入も高くなります。
それなりの経験と実績を積むことができれば年収500万円以上は都心部ではそれほど珍しいことではありません。もちろんそれ以上を稼ぐエンジニアも大勢います。
また案件数も多い都心部企業に就職することで、様々な案件を経験し実績を積み上げていくこともできます。
そうした経験と実績を元手に独立、更に大きなIT企業へ転職する、また更に専門職となる上位エンジニアとなるという道も開けてきます。
まだまだ人材不足、そして今後もより重要性が増すと言われるIT業界への転職で、今以上に安定感のある暮らしを送ることもできるのではないでしょうか。
もちろんデメリットもある
メリットに続いて、デメリットについても見ておきましょう。
- ITエンジニアに転職できてもスキルアップは常に求められる
- リモートワークのため、コミュニケーション力を磨かなくてはならない
IT技術は日々進化しており、数年ごとに新しい言語が生み出され、既存言語だけでなく新しい言語を習得しているエンジニアは様々なところで必要とされます。
逆に、いつまでも同じ程度のスキルしかない、成長がないエンジニアはそれ以上の収入を得ることは当然難しく、また獲得できる案件が減ってしまうリスクも抱えてしまうことに。
いつまでも必要とされる、より多くの案件で求められるエンジニアとして存在し続けるためには、常にスキルアップしていくことが求められる業界でもあるのです。
この点は容易にできるものではありませんからデメリットといえばデメリットとなるのかもしれません。
またもう一つ、テレワークは地方在住者でもエンジニアとして都心部の企業に身を置くことを可能にする助け船であると同時に、相応のスキルも求められることとなります。
出社して仕事をするのではなく、常に他のメンバーとPCを介してやり取りすることになりますから、対面する以上の対人スキルも求められるシーンも多くあるでしょう。
また自分で自分を律し、スケジュールを管理できる能力も求められることは言うまでもありません。
中にはテレワークということで、ついついだらけてしまう、仕事を後回しにする癖がついてしまうということが問題になり、退職を余儀なくされるケースもあるようですから、この点も気を引き締めていく必要があります。
勤めていた会社を退職して勉強に専念するというのはハイリスク
プログラミングに関するスキルの習得は簡単に短時間でできるものではありません。
だからこそ「集中して学びたい」ということで退職して勉強しよう、と考える方もいらっしゃるかも知れませんがこれはハイリスクな行為でおすすめできません。
退職してもタイミングよく次の就業先が見つかる保証がない、ということを念頭に行動していただきたいのです。
未経験者だけでなく、経験者であっても常に”自分にあった、自分を求めている企業がある”ということはありません。生活が安定しない状態では精神的にも安定できず、落ち着いて勉強できる環境ではなくなってしまう方も多いでしょう。
オンラインスクールなどでは仕事をしながらでも学べるものも多くあります。またこうしたものは4月スタートなど期限があるものとは違い、やろうと思えばその日にスタートすることができます。
空いた時間で安心して、集中して学ぶことができるものですから退職してまで勉強に身を入れるものではないと覚えておいていただければ幸いです。
まとめ
もし、首都圏へ転居して転職先を探すことが可能だということであれば、未経験であっても転職できる確率は大きく上がります。
しかし、既に持ち家がある、家族がいて子供の学校の問題などがあり、東京へ出ることが難しいと言う人もたくさんいらっしゃると思います。
『それでもITエンジニアになるという希望は捨てられない』という場合には、容易な道ではありませんが、前述のように地方在住のまま未経験からエンジニアへの転職は不可能ではありません。
プログラミングスキルを習得しつつ、適した求人を見つけることなど、苦労も多いのですが、努力できるのであれば道が開ける可能性は十分にあります。
また、以前と比較しても現在はフルリモートワークのIT企業も増えており、住む場所を考慮しなくても転職できる求人がとても増えています。
ただ、基本的には経験者に対してフルリモートでの求人はとても増えているのですが、未経験の人も募集している求人はまだ少ないのが現状です。
そのため、常に未経験OKの求人をキャッチアップできるように、転職サイトをチェックし、転職エージェントへ相談することが転職を叶える近道になります。
「2030年には最大79万人ものIT人材が不足する」と言われるほど、今後のIT人材不足はさらに深刻化すると、経産省のレポートでも公表されました。
既にIT業界では経験者人材の取り合いが激化しており、都心の中小IT企業の多くは経験者の中途採用がかなり難しくなっている現状もあります。
地方のIT企業も同じ問題が起こってはいますが、経験者の多くは都心で働いていますから、地方の経験者の中途採用市場は更に厳しい環境であるといえます。
既に都心では未経験者の人へ裾野を広げて、中途採用をしているIT企業が急増しています。理由はもちろん、経験者層が獲得できないからです。
これらの現状は未経験者にとってはチャンスが広がっている環境ともいえますが、異業種からITエンジニアに安易に転職を考えている未経験転職組も急増しています。
ITエンジニア未経験の転職市場が現在どうなっているかを把握することが、なによりも大切なことを覚えておいてください。
気軽に情報収集する手段として有効なのは、情報を多く抱える転職エージェントに相談することと、転職サイトに登録して自身の価値を見極めること。
IT人材の不足を解消していかなければ日本経済の発展は鈍化するともいわれています。
未経験の方がITエンジニアへキャリアチェンジしてくれることは業界にとってもとても喜ばしいことであり、ITエンジニアの仕事に距離は関係ないという証明ができれば、更に今後の働き方も柔軟になりますので、心から応援しています。